京都・嵯峨野にある、真言宗大覚寺派の本山、大覚寺。
ドラマや映画の撮影でよく使われているお寺です。
2007年のJR東海「そうだ、京都行こう」のCMにも使われていました。
大覚寺は正式には「旧嵯峨御所大覚寺門跡」といいます。
平安時代のはじめ、嵯峨天皇の離宮があった場所なので、旧嵯峨御所と呼ばれているんです。
大覚寺の境内はかなり広く、境内全域が国指定史跡に指定されています。
境内は王朝文化の雰囲気が漂い、四季折々の景色が素晴らしく綺麗で、桜や紅葉も見応えのあるお寺です。
雅さを感じるお寺ですが、実際行ってみると都会を忘れるような静かな場所で、座って休んだりすることもできる心地よいお寺です。
旧嵯峨御所と呼ばれる大覚寺、どんなお寺?
大覚寺のある場所は元々、嵯峨天皇が檀林皇后と成婚した時に建てた離宮があった場所です。
そこには嵯峨天皇と仲が良かった弘法大師 空海も出入りしていて、空海のために嵯峨離宮の一角にお堂も作ってました。
それが大覚寺の前身です。
嵯峨天皇が亡くなった後、嵯峨天皇の皇女・正子内親王がお寺に改め、皇孫である恒寂入道親王を開山としました。
それが大覚寺です。
大覚寺は「大覚寺
そのようなお寺を「門跡寺院」といいます。
住職さんのことも「門跡様」と呼ばれています。
大覚寺は明治時代初頭まで代々皇族の方が住職を務めていた、格式の高い門跡寺院なんです。
ところで嵯峨天皇は、かなりの文化人でした。
弘法大師空海とも親しく、空海、
二人はこの離宮で親交を深め、平安文化の開花に貢献しました。
嵯峨天皇がこのような文化に明るい人物だったからこそ、今でも離宮跡の綺麗な景色が残っていたり、「いけばな嵯峨御流」という生け花の流派が生まれたりしています。
9月には、「観月の夕べ」という名月の風情を味わうイベントが行われますが、これは嵯峨天皇が文化人を呼んで、寺の裏にある大沢池に船を浮かべて楽しんでいたことがはじまりになっています。
大覚寺の見どころ
大覚寺は境内が広くて見どころがたくさん♪
回るのに1時間以上はかかるので、時間には余裕をもって訪れたいところです。
江戸時代に後水尾天皇より下賜された「宸殿」
宸殿は、平安時代の貴族の住居に使われた寝殿造りの建物。
こういう建物があるのは門跡寺院ならではです。
宸殿は部屋が5つに分かれていて、狩野山楽筆の襖絵があります。
しかも、通常はこういうのは撮影禁止のところが多いのですが、大覚寺は撮影しても問題ないようで、バッチリ撮らせて頂きました^^
(追記:現在はお堂内の撮影は禁止されるようになりました。写真は禁止される前のものを使用しています)
撮影でよく使われる「村雨の廊下」
宸殿から御影堂に向かう廊下は「村雨の廊下」。
別名、稲妻の廊下と呼ばれています。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、廊下が直角にカクカク曲がっている造りになっているんです。
それを稲妻に見立てているのだとか。
そして柱を雨に見立てて、「村雨の廊下」というわけですね。
廊下から見える庭も綺麗です^^
政務が行われた「正寝殿」
鎌倉時代に御宇多天皇が院政政治を行っていたという正寝殿には可愛らしい「野兎の図」があります。
天皇の使いのみが通れる勅使門
御影堂(心経前殿)の南側正面にある門は、ただの門ではありません。
勅使門と言います。
天皇の名代のことを「勅使」というのですが、勅使の伝える言葉は天皇の言葉ですので、非常に重たい意味を持ちます。
勅使門は、その勅使を迎えるためだけに設けられた門なのです。
門には天皇家の菊花紋章もついています。
そういう門ですので、観光客の私たちは通ることはできません^^
そんな大事なお客さんが通るということは、その先には大事なものがあるということですが、それが「勅封心経殿」です。
上の写真は御影堂から撮っているのですが、
勅使門 → 御影堂(心経前殿) → 勅封心経殿
という並びになっていて、勅封心経殿を拝するための役割を持っています。
6人の天皇の般若心経を納める勅封心経殿
勅封心経殿は、大正時代に法隆寺の夢殿を模して建てられたものです。
ここには、天皇が浄書された般若心経、そして薬師如来像が祀られています。
この般若心経、弘仁9年(818)の大飢饉に際して、弘法大師 空海のすすめで嵯峨天皇が一字三礼(一字書くたびに3回の礼拝をする)で浄書しておさめたもの。
これによって疫病はたちまちに治まったという伝説が残っているんですね。
それ以来、後光厳天皇、後花園天皇、後奈良天皇、正親町天皇、光格天皇といった歴代の天皇もここに般若心経を納めています。
このようなことから、大覚寺は心経写経の根本道場となっているわけです。
これらの般若心経は「勅封般若心経」といって、60年に一度だけご開封されます。
一生に一度しかお目にかかるチャンスはありませんね。
開封する時は、天皇の命で訪れた勅使によってしか開封できないことになっています。
それを「勅封」というのですが、大覚寺の僧侶でも勝手に開けてはいけないんです。
最近で開封があった年は、平成30年(2018年)。
残念ながら次の機会までは遠すぎますね^^;
大覚寺でのイベントや写経体験など
心経写経の根本道場で写経体験
一字一願般若心経
大覚寺では、本堂である五大堂で写経や写仏の体験がいつでもできます。
用意されている写経には種類があって、
- 般若心経写経:般若心経全文の写経。スタンダードな写経
- 愛染写経:愛染明王の写仏+般若心経全文の写経
- ギャテイ写経:般若心経の重要な一部分のみの写経
- 一字一願般若心経(御影堂):一文字だけの気軽にできる写経
となっています。
普通に写経するなら「般若心経写経」を選びます。
大覚寺での写経の手順は、まずは
お香を手に取って清める儀式です。
塗香が済んだら、お経が薄く印刷された用紙をいただけるので、それをなぞっていきます。
なぞるだけなので、字を間違えたり、どこまで書いたのかわからなくなったりすることはありません。
なぞることだけに集中できますし、字に自信のない方も安心して体験できると思います。
書き終えたら最後に願い事を書いて、写経用紙を線香の上にかざして三回まわしながら清めて、仏前に奉納して終わりです。
所要時間は40分~60分。料金は1,000円です。
「愛染写経」は、縁結びのご利益を得たい方におすすめの写経です。
上で説明した般若心経写経に加えて、愛染明王の写仏があるのですが、こちらもなぞるタイプになっています。
写仏があるぶん、所要時間は60分~80分とかかりますが、料金は1,000円です。
「ギャテイ写経」は、写経はしたいけど時間のない方におすすめ。
5分~15分で写経することができます。
料金は500円です。
「一字一願般若心経」は、さらに時間のない方におすすめ。
特に、旅行会社のツアーなどの団体で来ている方には良いかもしれません。
上の写真の一番上、般若心経が右から左に書かれているのですが、1文字だけなぞります。
般若心経の写経をみんなでシェアするんです。
1文字だけなのであまり写経をしている感覚はありません。
お店の受付で名前を書くような、そんな感じですね。
でも、ちゃんと願い事を書く欄も用意されていますよ^^
所要時間は3~5分でできて、料金は100円です。
写経は五大堂で行いますが、一字一願般若心経だけ御影堂で行います。
写経を体験するなら、朝一番がおすすめです。
参拝客がまだ少ない時間帯にやると、自然の音しか聞こえない中で写経に集中できますので、やり終えた後に清々しさを得ることができますよ^^
平安時代の月見遊び「観月の夕べ」
御本尊の五大明王を祀る五大堂のすぐそばには、大沢池が広がります。
蓮がたくさん咲いていて、月見台があります。
実は大沢池は、嵯峨離宮の苑池として作られた人工の池で、日本三大名月観賞池の一つとされています。
かつては文化人たちを集めて、船の上で和歌を詠みながら宴を楽しんでいたようです。
雅ですね。
そんな、平安貴族の遊びを追体験することができるイベントが「観月の夕べ」です。
毎年、中秋の名月の日を含む3日間行われ、竜を模した船に乗って月を鑑賞することができます。
大沢池を約20分かけて周遊するのですが、空の月だけでなく、水面の月も楽しめるのもポイントです。
料金は入場料500円のほか、舟席券は 別途1000円必要です。
舟の出発は17時台、18時台、19時台、20時台となっていて、舟券は全部で100枚ほど、勅使門前で15時頃から販売開始されます。
人気は程よく月が昇った時間帯の19時台。
この時間のチケットを購入するなら、なるべく販売開始の15時より前から並んだ方が良いかもしれません。
また、五大堂には観月席が設けられて、お月見をしながらお抹茶とお菓子が頂けます(800円)。
※イベントのやり方や料金は変わる可能性がありますので、確実な情報は公式HPをご確認ください。
大沢池周辺や心経宝塔はライトアップされ、宝塔付近では、地元京都のお店の露天を楽しむことができます。
心経宝塔で四国八十八ヶ所霊場のお砂踏みを体験
大沢池の畔にある「心経宝塔」は、嵯峨天皇の心経写経1150年を記念して、昭和42年に建てられた比較的新しいものです。
普段は非公開なのですが、時々特別公開が行われて、中に入ることができます。
中では、四国八十八ヶ所霊場のお砂踏みが体験できます。
私が参拝した時にたまたま内部公開をしていて、内部で四国八十八ヶ所霊場のお砂踏みが体験できました。
内部は撮影禁止なので写真はないのですが、お砂踏みは四国の八十八霊場それぞれのお砂が座布団の中に入っていて、それを踏みながら各お寺の御本尊の真言を唱えるというものです。
このお砂を踏むことで、お遍路さんを1回まわったことになるそうです。
座布団の前には各寺の御本尊が描かれた掛け軸が掛けられていて、そこに真言も書かれています。
順番に座布団を踏んで、書かれている真言を口に出して唱えていけば良いわけです。
八十八霊場のお参りが済んだ所に、如意宝珠を納めた真珠の小塔が安置されていました。
そこで祈願をして、観音菩薩像に礼拝、弘法大師像にお礼をして終了です。
特別公開は、桜の時期や紅葉の時期に比較的よく行われています。
大覚寺の御朱印
大覚寺は
- 真言宗十八本山
- 近畿三十六不動霊場第十三番
という札所です。
私は真言宗十八本山の分を頂きました。
大覚寺にはオリジナルの御朱印帳が4種類あります。
- 龍頭図朱印帳(1,500円)
- 牡丹図朱印帳(1,500円)
- 大沢池朱印帳(青と緑の色違い2種:1,200円)
となっています。
龍頭図は、大覚寺の裏の大沢池に浮いている龍頭船をモチーフにして、刺繍で表現したもの。
牡丹図は、お寺の宸殿「牡丹の間」にある襖絵(狩野山楽 筆)を忠実に再現したもの。
大沢池は、大沢池から見える桜の風景と心経宝塔を西陣織で表現したものです。
私は牡丹図の朱印帳が気に入ったので、そちらを頂きました^^
また、同じ牡丹図朱印帳ですが、大覚寺の門跡様直筆のものだと3,000円で販売されていました。
大覚寺の駐車場・アクセス
大覚寺の駐車場について
大覚寺の駐車場は、境内の南側にあります。
料金は、
- 自家用車30台(2時間:500円)
- バス10台(2時間:2000円)
となっています。
自家用車の場合、2時間以降は30分毎に100円プラスされていきます。
※2020年8月時点での情報です。料金は変わる可能性がありますので、最新情報は大覚寺のHPの参拝・アクセスをご確認ください。
嵯峨・嵐山周辺の駐車場の相場は、最大料金で平日で1,000円前後。
休日は、最大料金が2,000円のところや、最大料金の設定がない駐車場も珍しくありません。
さらに、桜や紅葉シーズンの時は平日でも最大料金設定がなかったりするのがほとんどです。
それを考えれば大覚寺の駐車場は、大覚寺だけピンポイントに訪れるなら安いですね。
普段は混むことはないと思うのですが、休日や桜や紅葉シーズン、イベント時は満車になる可能性があります。
嵯峨・嵐山エリアは、大きめの民間駐車場があまりなく、あったとしても小さいので、満車だと次を見つけるのが大変です。
なので、嵯峨・嵐山を訪れるなら、基本的には公共交通機関を利用するのがおすすめです。
京都駅からも行ける!大覚寺に電車・バスで行く場合
大覚寺に公共交通機関でアクセスする場合は、電車だと
- JR嵯峨嵐山駅から徒歩約16分
- 嵐電嵯峨駅から徒歩約20分
- 阪急嵐山駅から徒歩約30分
です。
駅から嵐山方面とは反対側にあるうえ、観光で色々回りたい方には徒歩だとちょっと遠く感じるかもしれませんね。
嵐山の各駅からは、大覚寺前で停車するバスがでています。
- 嵐電嵐山駅:バス停「嵐山天龍寺前」より市バス28、京都バス94
- 阪急嵐山駅:バス停「阪急嵐山駅前」より市バス28、京都バス94
- JR嵯峨嵐山駅:バス停「嵯峨嵐山駅前」より市バス91
いずれもバス停「大覚寺」で降りて、料金は230円です。
料金は改定されることもありますので、詳しくは各バス会社のHPでご確認ください)
また、嵐山以外の場所からバスで大覚寺に直接行くのも良いかもしれません。
- JR 京都駅:烏丸口 C6より市バス28(所要時間:約54分)
- 地下鉄 四条駅:バス停「四条烏丸」より市バス91(所要時間:約46分)
- 阪急 嵐電西院駅:バス停「西大路四条」より市バス28(所要時間:約33分)
いずれもバス停「大覚寺」で降りて、料金は230円です。
大覚寺と嵐山の駅を往復するのも結構時間をとりますので、片道だけでも節約できると思います。
夏の大覚寺は、外は暑くてもお堂周りは日陰が多く、風も涼しくて心地よいところでした^^
自由に座って休んでいる人もいましたし、写真もほとんど自由。
それでとがめられないのが懐が広いですね♪
今度は写経しに訪れたいです。