不動明王

「お不動さん」、「不動尊」などと呼ばれて親しまれている不動明王。
古代インド生まれで、大日如来の化身とされています。

「明王」というのは、仏教の中でも密教から生まれた仏様です。

明王以外の仏様には如来や菩薩がいらっしゃいますが、如来と菩薩は正しい道を優しく教えてくれます。

しかし、優しく教えてばかりだとそこに甘える人が出てきてしまうんですね^^;
それではせっかく救われる道を教えても、わかってもらえません。

そのような救いがたい者たちを教化するためにいるのが「明王」です。
明王は「忿怒の相」という威圧的な恐ろしい姿をしています。

不動明王

明王にもいろいろな明王がいるのですが、その中で中心的役割を担っているのが「五大明王」です。
不動明王はその中でもトップに君臨する存在です。

なので、明王の中でも功徳やご利益を伝える霊験説が格段に多いですね^^

「明王」の「明」は元々「知識」を意味し、密教では真言陀羅尼を意味します。
それらは呪文のようなものですが、明王はそういう呪力(明)をもった持明者の「王者」ということです。

不動明王はもともと「アチャラナータ」という名前で、その意味は「動かない守護神」を意味することから、王の中の王を示す尊格として崇められていたことがわかります。

不動明王の右手に持つ諸刃の剣は、悪行や煩悩を打ち砕く智慧を示し、左手に持つ羂索(けんさく)は、衆生を仏の世界に引き寄せる慈悲を示します。

不動明王 不動明王

諸刃の剣というのは刃が内にも外にも向いている剣で、あわよくば自分の身も滅ぼしかねない剣なのですが、それだけ命がけで救おうとするので、救われようとする人も命がけで向かわなければならないということを示しています。

(※上のフィギュアは、「仏像フィギュアのイSム(いすむ)」の通販で購入できます。)

不動明王の姿の特徴を表す「不動十九観」

不動明王を心に浮かべる時、その見た目の特徴を表すものに「不動十九観」というものがあります。

これは、空海がもたらしたものをはじめいくつか種類があるのですが、歴史的にはっきりしているものは天台宗の安然(841~915年)がまとめたものです。

満たしていない不動明王像もたくさんありますが、これを満たしたものを心に描くと理想的な不動明王の姿が描ける考えられます。
このようになっています。

  1. 大日如来の化身であること。
  2. 真言中に「ア」・「ロ」・「カン」・「マン」の四字があること。
  3. 常に火生三昧に住していること。
  4. 童子の姿を現わし、その身容が卑しく肥満であること。
  5. 髪の毛の上に七沙髻があること。
  6. 左に一弁髪を垂らすこと。
  7. 額に水波のようなしわがあること。
  8. 左の目を閉じ右の目を開くこと。
  9. 下の歯で右上の唇を噛み、左下の唇の外へ出すこと。
  10. 口を固く閉じること。
  11. 右手に剣をとること。
  12. 左手に羂索を持つこと。
  13. 行者の残食を食べること。
  14. 大磐石の上に安座すること。
  15. 色が醜く、青黒であること。
  16. 奮迅して忿怒であること。
  17. 光背に迦楼羅炎(かるらえん)があること。
  18. 倶力迦羅竜(くりからりゅう)が剣にまとわりついていること。
  19. 2童子が侍していること。

いくつかピックアップしてみます。

まず、3の「火生三昧」

不動明王は自ら火炎光を出すことができます。
本物の仏像や仏画を見ていただければわかるのですが、光背(仏像の後ろにつける装飾)には「迦楼羅炎」という煩悩を焼きつくす炎が上がっているところが表現されています。

そこに座って三昧に住する、つまり瞑想の境地にいるということです。

次に4の「童子の姿」

不動明王の起源は、如来の使い走りをする童子に由来していると考えられています。
肥満形は、その当時のインドで理想的な子供の姿だったからです。

5の沙髻や6の弁髪も、その当時のインドやチベットでの子供らしさを表しています。

最後に13の「行者の残食」

密教の修行僧の残したものを食べ尽くす、ということです。
その意味は、なかなか捨て去ることができない根本的な迷いを、代わりに滅してくれるということです。

死者の追善供養の仏としても祀られる不動明王

不動明王は「水不動」「身代わり不動」など、様々な形で信仰されていますが、その中でも有名なのが十三仏としての不動明王です。

全国各地に、十三仏信仰というものがあるのですが、これは、死者の追善供養のために行う十三の仏のことです。

十三仏は、初七日から三十三回忌までの十三回の年忌に割り当てられて、それぞれの年忌を当番制で守護しています。
詳しくはこちらに書きました。⇒京都十三佛霊場とは?

不動明王は一番最初の初七日を担当します。
なので追善供養を考えている方はぜひ、ご挨拶をしておきたいところですね^^


不動尊を祀るお寺は全国にたくさんあります。
たくさんいる神仏の中で、特に不動尊を祀っているお寺を参拝したいのなら、「関東三十六不動尊霊場巡り」や「近畿三十六不動尊霊場巡り」など、全国に霊場巡りがあります。

専用の御朱印帳も札所になっているお寺で販売されていると思いますので、それを購入して巡ってみるのも良いですね。

そして、不動尊の御縁日は毎月28日。
この日は普段以上の御利益が得られます。

また、年の最初の1月28日は「初不動」、年の最後の12月28日は「納め不動」となっています。
この日は盛大に護摩炊きなどを行うお寺が多いですので、不動尊を祀るお寺を参拝してみて下さい^^