奈良県立美術館

奈良県立博物館で開催されている「大古事記展」に行ってきました!
「大古事記展」は、「古事記」にゆかりのある宝物や絵画、文献などが集め、古事記の世界を紹介する展覧会です。

「古事記」は”日本最古の史書”という位置付けですが、すべてが歴史的史実ではありません。
日本の神話から始まり、それに続く初代天皇の神武天皇から7世紀前半の推古天皇までの歴代天皇の物語までが語り継がれていて、フィクションと思えるものを交えながらもその中に史実を反映している部分があるんですね。

なので、どこまでが伝説でどこまでが史実に基づいているのか、そういうものを見極める面白さがあります。
また、明らかに伝説だと思うものでも、それを信仰してきた事実もあります。

そのようなもので残っている文献や美術品が一堂にみれるのは貴重な機会ですね^^

こちらがリーフレット。

大古事記展

「五感で味わう」と書かれていますが、まさにそのような内容になっています。

古事記を読んでもその世界観を想像するのに難しい部分があると思いますが、展覧会では古事記に登場する神宝やアイテムなどがエピソードと一緒に紹介されているコーナーもあり、古事記の内容を知っている方はその世界観がより鮮明になると思います。

例えば、イザナミ・イザナギが天の橋に立ち、矛をかきまわして島(日本)を作る場面ですが、その様子を描いた絵画のほか、弥生時代に使われていた「銅矛」がいっしょに展示されています。
言葉では聞いたことあるけど、実物がわからないアイテムがどんな背景で使われていたのかがわかる、またとない機会ですね^^

古事記ゆかりの品々を一同に拝見できます

七枝刀

私が今回一番見たかったのは、石上神宮(いそのかみじんぐう)が所蔵する国宝の七枝刀(しちしとう)です。
※写真:石上神宮パンフレットより)

石上神宮は大和朝廷の武器庫とされていた神社で、七枝刀はそこに納められている神剣の1つ。
「日本書紀」に記述があることから関連性が指摘されている古代遺品です。

剣の形が面白いですね^^
その形から考えると、おそらく戦いのためではなく、祭具として使っていたのでしょう。

表裏には銘文があって、現在の解釈によると、泰和4(369)年に百済王世(子)が倭王のために七支刀を造ったとされています。
日本書紀では神功皇后摂政52年の頃に百済から七枝刀(ななつさやのたち)が献上されたと書かれているので、この刀がそれに当たると推測されているんですね。
もしこの推測が正しいのであれば、日本の古代史上、年代が明確な最古の史料ということになるんです。

七枝刀は普段は完全非公開で、石上神宮に参拝に行っても出会えませんが、今回はそれを拝見できる滅多にないチャンスとなっています。

ただ、一つだけ注意点があって、大古事記展の期間は(10/18~12/14)となっていますが、七枝刀の公開は(10/25~11/24)となっています。
それ以外の期間は複製品の展示となっています。

※ 残念ながら私が訪れたのが18日と、ちょっと早すぎたのでレプリカ展示でした^^;

石上神宮からは、その他にも勾玉や管玉、金銅鐶などの拝殿後方にある御神体が鎮まる霊域「禁足地」からの出土品が展示されていました。

明治時代に禁足地の調査があって、その時に神剣「布都御魂」をはじめとする神宝類が多数出土しましたが、あくまでその調査は例外的。
基本的に現在でも誰も足を踏み入れることが許されない聖域となっています。
そのような聖なる場所で出土したものですから、かなり貴重な宝物ですね^^

絵画に関しては、明治~昭和期くらいの近代に描かれた絵画が多くありました。
その中で一番印象的だったのは、前期展示になっている堂本印象の「木華開耶媛(このはなさくやひめ)」。

木華開耶媛
※画像:2014年9月25日 朝日新聞の夕刊より

実物は170.0×238.0cmの結構大きな絵画です。
「美」を象徴する神らしく、清楚で美しく日本美人風に描かれています。
目を奪われてしまうほど綺麗でした^^
ぜひ、本物を見ることをオススメします。

太安萬侶墓誌

そしてもう1つ、感慨深かったのは、1979年に奈良市東部の茶畑で見つかった重要文化財太安萬侶墓誌
※画像:2014年9月25日 朝日新聞の夕刊より

太安萬侶(おおのやすまろ)は、古事記の編纂者なのですが、この墓誌が見つかったということは、太安萬侶は実在した人物であったということがわかります。

古事記には偽書説もありますし、本当に太安萬侶が編纂したのか?と聞かれれば真実はわからないかもしれませんが、少なくとも太安萬侶という人物が実在したということは大きなインパクトになりますね。
古事記はどこまでが史実なのか?という謎に迫る文献の1つとなりえるでしょう。

また、多坐彌志理都比古神社(おおにますみしりつひこじんじゃ)に伝わる太安萬侶神坐像も展示されていました。

太安萬侶神坐像
※画像:2014年9月25日 朝日新聞の夕刊より

笏を持っている像はよくありますが、この像はそれを右手でおさえるという独特な形をとっています。
もしかしたらこの形にも、太安萬侶に関わる何らかの意味があるかもしれませんね^^

天の岩戸神話がゲームに?ゲームセンターアマテラス

ゲームセンターアマテラス

大古事記展の最後には、古事記にインスピレーションを受けた現代アートの新作が発表されていました。
その中で一番気になったものが、トーチカという作家による「ゲームセンターアマテラス」です。
ゲームで古事記の世界を体感する映像アトラクションなのですが、ここは写真撮影OKだったので、撮らせていただきました^^

このゲームは、古事記に出てくる「天岩戸神話」がテーマになっています。

ゲームセンターアマテラス 天岩戸

天岩戸神話では、弟のスサノオの暴れっぷりに嫌気がさしたアマテラスは天岩戸に閉じこもってしまうのですが、太陽神であるアマテラスが隠れてしまったために世の中がまっくらになってしまいます。
そこでアメノウズメが岩戸の前で踊り、アマテラスの気を引いているうちにアマテラスを岩戸から引っ張り出す、という内容でしたね^^

このゲームでは、閉じこもったアマテラスを引っ張りだせればクリア、というものです。
ゲームの主人公はアメノウズメ。

ゲームセンターアマテラス アメノウズメ

ゲームは、アマテラスは岩戸に入ったものの、いつ出ていってもいいんだけど出て行くタイミングを失ってしまった・・・そのきっかけが欲しい、と困っているところから始まります。
そこで登場するのがアメノウズメです。

ゲームは5人同時プレイで、プレイヤーはアメノウズメと一緒に踊ります。
「踊る」と言っても、リズムに合わせて足踏みだけで楽しめるようになっています。

YouTubeにアップされている動画があったので、こちらをご覧ください。

私も参加して、見事クリアしました♪
参加するのも楽しいですが、映像に映っているアメノウズメの踊りはかなり上手ですね!
さすが芸能の神様です^^


大古事記展は、初心者でもわかりやすいような説明がされていますが、一から古事記を知る、というよりもある程度古事記を知っている人が「古事記の○○の場面に登場した○○」みたいなものに出会えるという感じです。

なので、概要だけでも良いのでなるべく古事記について知ってから行った方がより楽しめると思います。
分かりやすく書かれている本は今たくさんありますが「ぼおるぺん古事記」などは古事記を簡単に知るにはなかなか良いマンガだと思いますのでオススメです。

ちなみに、「ぼおるぺん古事記」に関しては、その原画の一部も展示されていますよ^^

そして、より作品について知ることができるギャラリートーク(無料・事前申込みは不要・所要時間 約1時間)もオススメです。
学芸員の方が館内を回りながら要所要所で展示品の解説をしてくれます。
私が観覧中の時もギャラリートークの集団が通りがかりましたが、ものすごくわかりやすく解説されていました。

そして最後にお得情報を1つ。
大古事記展の観覧料は一般で800円ですが、「なら記紀・万葉 イベントガイド」というパンフレットを持っていくと、観覧料が200円OFFになります。

なら記紀・万葉 イベントガイド

「1冊につきお一人様限り」と書かれているので、人数分持参する必要があります。

このパンフレットは奈良県各内の観光案内所か、近鉄主要駅などで無料配布されています。
美術館の近くだと、近鉄奈良駅1階にある総合観光案内所がありますので、そちらで頂くと良いですね^^