春日大社 式年造替

春日大社では、平成27年~28年にかけて、二十年に一度の式年造替(しきねんぞうたい)のメインイベント、遷座祭(せんざさい)が行われます。

伊勢神宮では、二十年に一度、社殿や御神宝などを新しく新調して、御神威を増していただく「式年遷宮」というものが行われますが、式年造替も目的は同じです。

違いはというと、お引越しの仕方です。

式年遷宮の方は、現在のお宮のすぐお隣の敷地に新しいお宮を建てて、そこに神様にお遷りになっていただきます。
「遷宮」と言います。

遷った後の古いお宮は取り除き、次に遷宮する二十年後にまた新しいお宮を建てます。

つまり、二十年に一度、左から右へ、右から左へ、と交互にお引っ越しされるわけですね^^

それに対して式年造替は、「造り替え」です。

造り替え中は、神様に一旦、仮のお宮にお遷りしていただくのですが、そこはあくまで仮殿。
出来上がったらまた同じ場所に戻っていただくのです。

式年造替は平成19年の一ノ鳥居の修理から始まりましたが、平成27年にはいよいよクライマックスとなるメインイベント、御本殿の番が回ってきました。
御本殿の修理が終わって、神様に仮殿から御本殿に戻っていただいたら式年造替は終了です。

そして3月27日は、御本殿修理前に大神様に仮の御宮に遷っていただく、仮殿遷座祭(下遷宮)が行われました。

遷っていただばかりの今は、大神様は御本殿にいらっしゃらないですし、まだ修理工事にも取り掛かっていません。
その期間を利用して、通常非公開の御本殿の拝観が可能になっています。

春日大社 看板

春日大社での参拝は通常、弊殿の前で行います。

その時に本殿が見えるか?というと、「弊殿-林檎の庭-中門-本殿」となっていて距離がありますし、中門が幣殿から斜めの位置にありますので、弊殿から本殿はほとんど見えないんですよね。

そこで、普段から行われている特別参拝があります。

それは、初穂料500円を払えば、中門の前まで行くことができるというもの。
それでも行けるのはそこまでで、中門から中に入ることはできません。

今回はスーパー特別参拝ともいえるものなので、中門から更に中に入って、御本殿の前で参拝できるというわけです^^

残念ながらちょっと見にくいですが、頂いたマップに線を引きました^^

  • 緑の線:通常参拝で行ける範囲
  • 青の線:いつもの特別参拝で行ける範囲
  • 赤の線:今回のスーパー特別参拝の範囲

となっています。

春日大社 大宮境内マップ

いつもは弊殿の横が特別参拝の受付になっているのですが、スーパー特別参拝では、直会殿の後ろが受付になっていました。

春日大社 受付

特別拝観料は1,000円。
式年造替特別記念品付です。

頂いたのはこちら。

春日大社 式年造替 記念品

今回の式年造替用に作られたパンフレット、参拝証にもなっているしおり、そして記念品です。
記念品の中身は、「三笠香」というお香でした。

天然の漢方香料、龍脳、白檀、桂皮、丁子などを配合したもので、ジップ付ケースに入っています。
良い香りなのですが、紙、ジップ付ケース、紙と3重になっているにも関わらず結構強い香りです。
かばんの中が香りでいっぱいになりました^^

なぜこのような記念品になっているのか?というと、なんでも春日大社は、お清めに「香」を用いる神社なのだとか。
神仏習合のなごりかもしれませんね^^

新順路も登場!国宝 御本殿特別公開

今回の特別公開は御本殿だけではありません。
他にも普段は公開されない場所が公開されています。

  • 移殿(うつしどの)(御仮殿):仮遷宮中に大神様が祀られている御殿。
  • 後殿(うしろどの):御本殿の真後ろにある災難厄除けの霊験あらたかな神々様が祀られている御殿。140年ぶりに公開。
  • 禁足地 御蓋山浮雲峰遥拝所(みかさやまうきぐものみねようはいじょ):大神様がはじめに降り立たれた御笠山の頂上を遥拝する場所。

いずれも普段拝観できない場所ですから貴重ですね。

受付を済ませたらまずは、春日大社、といえばこの門を想像するくらい有名な中門・御廊の前にでます。

中門

門と回廊が一体となった建物ですが、普段の特別公開ではこの前まで行って参拝することができます。

御本殿と間違えそうになるくらい立派な門ですね。
実際、間違える人が多いそうですが、この門はあくまで本殿前の門ですよ♪

ちょっと前まで修復作業の素屋根が組まれていたのですが、それも取り払われていました。
終わったばかりの中門は、屋根の葺き替えはもちろん、朱の色も塗り替えられていて、ものすごくきれいになっています^^
以前、春日大社に訪れた時の記事を書いていますが、写真を比べると違いがわかります。


【春日大社】奈良を代表するパワースポット

朱の色は昔から配合が決まっているので、色合いは昔と変わっていないのだそうです。

中門の隣にあるのが御仮殿となっている移殿
本遷宮前の現在、大神様はこちらにいらっしゃいます。

春日大社 移殿

普段はどんなに近づいても中門の前からの参拝なので距離があるのですが、御仮殿ではすぐ近くに依代の鏡などが置かれていました。
春日の大神様は日本有数の明神様ですし、目の前におられると思うと緊張しますね^^;

そしてお次は、普段閉じられている後殿
江戸時代までは普通に参拝出来たのだそうですが、明治維新以来、理由はわかりませんが、後殿の入り口となる後殿御門が閉ざされたのだそうです。
それから今まで140年近く閉ざされていたので、それ以来の一般解放となります。
(ここから先、本殿までは撮影禁止なので写真はありません。)

後殿には五柱の神様がいらっしゃいます。
いずれも災難厄除けの霊験あらたかな神様達です。

  • 佐軍神社:悪縁を絶ち、平穏をお守りくださる神様。
  • 杉本神社:建物の高層階で生活する人々の安全をお守り下さる神様。
  • 海本神社:食の安全を守る神様。
  • 栗柄神社:出入りの門をお守り下さる神様。
  • 八雷神社:雷の力(電話・通信・電気)で人々に幸せをもたらす神様。

140年も閉ざされていたのに、建物の高層階や電気に関係する神様が祀られているなんて、イマドキな神様達ですね^^
なかなか直接参拝できないので、この機会にぜひ参拝しておきたいところです。

後殿には、チェックポイントが一つあります。
御本殿の後ろにある磐座が拝観できるんです!

磐座は御本殿裏側の第一殿と第二殿の間にあるのですが、御本殿と後殿は柵で分けられていて、説明文を読まずに進むと見過ごしてしまいそうなところにあります。
一見どこにあるのかわかりにくいです^^;

実物は、漆喰で塗り固められているのですが、なぜそこで祀られているのかも謎のもので、春日大社にある文書や絵巻物にも記載が見つからないのだそうです。
謎の多い磐座で、大社建立前に神聖な場所の目印として設けられたともいわれるのですが、とにかく御本殿の創建と深い関わりがあると考えられているそうです。

そしてお次は御本殿

春日大社の御本殿は、本殿は第一殿から第四殿まで一列に並んでいるのですが、それぞれの御本殿は、日本の代表的な神社建築の一つ「春日造」の原型となっている社殿です。
切妻造・妻入で正面柱間は1間、屋根は曲線的なフォルム、正面にだけ向拝があるのが特徴です。

祀られている神様は、

  • 第一殿:武甕槌命(たけみかづちのみこと)
  • 第二殿:経津主命(ふつぬしのみこと)
  • 第三殿:天児屋根命(あめのこやねのみこと)
  • 第四殿:比売神(ひめがみ)

です。
古事記や日本書紀でも活躍が描かれている神様ですね^^
この四柱の神々を合わせて、春日大神様や春日大明神と呼ばれています。

御本殿の写真はありませんが、本物の御本殿の代わりに、新薬師寺横にある鏡神社の御本殿の写真で紹介します。

新薬師寺 鏡神社

ちょっと見えにくいですが、この神社の御本殿は、「春日移しの社」と言われています。
延享三年(1746年)に春日大社の式年遷宮の時、第三殿の旧殿を移築したとのこと。
つまり、元々本物だった社殿です。
今も形はこのまんまです。

今回の春日大社御本殿の参拝では階段の下まで行けるので、結構な大きさでものすごい迫力というか、御神威を感じました。

御本殿を参拝する時、一つチェックポイントがあります。
それは、独特の朱の色です。
周りの建物の朱の色よりも濃いんです。

その色は「本朱」というのですが、水銀をベースとした朱が100%使われていて、他の社にはあまりありません。
朱の色は魔除け力があるとも考えられていたので、御本殿には特にその力を込めたのでしょうね。

社殿と社殿の間の壁には、神馬や獅子が描かれています。
これらは絵馬の原型ともいわれているそうですが、この絵が見れるのも今回だけですね^^

写真で紹介できないのは残念ですが、これから拝観される方は、その辺もぜひチェックしてみてください。

そして最後は、御本殿東側にある禁足地、御蓋山浮雲峰遥拝所

御蓋山浮雲峰遥拝所

「禁足地」というのは、足を踏み入れてはいけないという意味なのですが、それだけ神聖な場所とされているところです。
写真の鳥居から先は、春日大社の神職さんでも普通は入ることが許されない聖域なんです。

御本殿の東側にあるのですが、鳥居から先にあるのが三笠山で、春日大社の神体山になっています。

御祭神の第一神、武甕槌命は、平城京守護のために鹿島の国(茨城県)の鹿島神宮から白鹿に乗って来ました。
そして、最初に降り立ったのが三笠山の山頂「浮雲峰」。

この場所はその浮雲峰を拝む遥拝所となっています。

この場所は「神域」ということで、人の力で守られた原生林となっています。
国の法律で狩猟や伐採の禁止されていたんですね。
そういう例は世界的にも珍しいそうです。

そしてここは野生の「藤」が生えていて、4月の下旬から5月の下旬になると、藤色のカーテンが広がるそうです。

「藤」というと、藤棚できれいにされるのを良く見ると思いますが、それはあくまで作られた藤。
御蓋山浮雲峰遥拝所は、野生の藤が見れる貴重な場所でもありますね。
この時期もまだ公開中ですから、訪れてみたいです^^

初公開!御神宝の鹿島立鉾

春日大社 桂昌殿

御本殿の西側には、桂昌殿という建物があります。
ここでは、4月5日まで御神宝の公開が行われていたので、そちらも拝観しに行きました。

注目は、鹿島立神影図(かしまだちしんえいず)と、今回初公開となる鹿島立鉾(かしまだちほこ)

パンフレットから写真を拝借すると、まず、鹿島立神影図はこのような図です。

鹿島立神影図

鹿島立神影図は、武甕槌命が三笠山に降り立った時の様子が描かれています。
これこそがまさに春日大社のはじまりの様子ですね。

写真を見てわかるとおり、御神体は大きな紙垂で隠されています。
なんでも、この図を拝礼する時に使う場合は、紙垂で御神体を隠す信仰があるのだそうです。

隠す理由は、あまりお姿があらわなのは勿体ない、ということと、また、お隠しする方が強い御神徳をあずかれるという理由なのだそうです。

時々博物館などで展示されますが、その時は紙垂は外されているそうです^^

写真ではわかりにくいですが、月のようになっている円鏡には、御神体の仏の姿(本地仏)が描かれています。
春日大社の創建は奈良時代ですが、この絵は室町時代に描かれたものなので、神仏習合の影響が出ているということですね。

下にいる2人は、大神様の御供についてきた、鹿島神宮の初代神主さん。
この神主さん達の子孫が、春日大社代々の神主となっているのだそうです。

そしてその方々が持ってきた鉾が「鹿島立鉾」です。

鹿島立鉾

この鹿島立鉾は、今回初の公開です。
20年に1度宝庫から出すそうなのですが、最近初めて調査してもらった結果、国宝級の文化財だということがわかったそうです。
今後は国宝指定されることも期待できますね^^


桂昌殿の中には売店もあって、式年造替の限定グッズや、春日大社の書籍などが販売されていました。
私はこちらの「春日権現記」(1,000円)を購入しました。

春日権現記

春日明神の霊験あらたかぶりが書かれた絵巻物なのですが、その解説がされています。
霊験談はもちろんですが、絵巻物をもとに当時の風俗、文化などもこの本で解説されていて、面白そうな感じです^^

式年造替のグッズとしては春日大社の「すがちゃん」が全面押しとなっていました^^

春日大社 すがちゃん

春日大社の参道にもショップが設けられていて、式年造替の期間中限定で販売しているようです。
式年造替は、ご本殿の修繕が終わった後、大神様がお戻りになって完了となるのですが、その儀式である本殿遷座祭は、平成28年11月6日となります。

おそらくそれまでは販売されていると思うのですが、欲しい方は早めに行っておくとよいですね^^