冷水寺

高月駅から西南、バスで6分ほどの場所に「宇根」という集落があります。
このあたりは肥沃な農業地域で、古くは「宇根野ヶ原」と呼ばれ、原野だったそうです。
それが神社を中心として独自の文化や伝統を育みながら発展してきました。

そんな宇根の集落に冷水寺というお寺があります。

お堂の前に清水が沸いていたことから「冷水寺」と名付けられたそうですが、冷水寺は、お寺といっても小さな観音堂があるだけ。

冷水寺 観音堂

でもここには、今から約1300年前、奈良時代に活躍した僧・行基が刻んだと伝わる観音像が安置されているんです。

行基作ともなると、京都や奈良の有名なお寺で安置されているイメージが多いのですが、こういう村の小さなお堂にも安置されているんですね^^

焼けてもなお守られる焼損仏

冷水寺は元々、「宇根野寺」という名前でした。
神亀年中(724~729)に行基がこの地で観音像を刻んで開いた小堂が宇根野寺です。

下の写真は、冷水寺の観音堂に祀られている観音様。

冷水寺 観音

冷水寺 観音

正面から見ると、額縁に入っているようです。

冷水寺 観音

かなり容姿端麗な仏様。
とても奈良時代の作には見えないな~・・・という感じですが、もちろんこちらの十一面観音さんは奈良時代のものではありません^^;
元禄15年(1702)、江戸時代中期に作られたものなんです。

実はこの観音様、鞘仏(さやぼとけ)といって、刀の鞘のように、中が空洞になっている仏様です。
中に何を納めるのか・・・それはもちろん、仏様です。

その仏様がこちら。

冷水寺 聖観音

パネル写真ですが、これは冷水寺のすぐ横にある世界一小さい資料館「冷水寺 体内仏資料館」で展示されているパネルです。
ケヤキによる一木造りで、平安時代の制作とみられているのですが、なんとも傷ましい姿ですね><

天正11年(1583)、この地では羽柴秀吉と柴田勝家が戦った賎ヶ岳の合戦がありました。
織田家を二分して戦った、歴史に残る大きな合戦です。

その戦いで、柴田勝家軍はこのあたり一帯を焼き討ちしたのです。

一方、宇根野寺は、貞観年間(859~877)に智証大師・円珍がこの地を訪れた際に「安浄寺」と改称し七堂伽藍が整備されていました。
安浄寺は現在の冷水寺観音堂から東へ約100メートルの位置にあったそうです。

肥沃な大地に立派なお寺もあって、さぞかし豊かな地であっただろうと想像できるのですが、合戦でことごとく焼き払われ、安浄寺も焼けてしまいました。

御本尊もその時に大きく焼損されてしまったのです。

村人たちは焼け傷んだ像を安置するために小さなお堂を建てて、お堂の前に清水が沸いていたことから「冷水寺」という寺号に改めたそうです。

それから長い間、御本尊は秘仏として祀られていたのですが、元禄12年(1699)になって、お堂の扉が自然に開き、中から傷ましい観音様が現れたのだそうです。

村人たちはその容姿に心を痛めましたが、修理の施しようもないほど痛ましかったので、京都で鞘仏を作ってもらい、御本尊は胎内仏として安置したのです。

その鞘仏が、観音堂で見られる十一面観音像です。

御本尊は、下の写真のように、鞘仏の台座まで利用して深く納められていました。

冷水寺 本尊

鞘仏よりも大きい仏様なのですが、台座部分へ入れて上から鞘仏をかぶせるようにすることで上手に納められているのです。

焼け損じても守られる仏様。
そのようなお姿になっても、粗末に扱わず崇拝し続けた、篤い信仰の歴史を感じますね。

世界一小さな資料館「冷水寺胎内仏資料館」

冷水寺 資料館

冷水寺の横には「胎内仏資料館」という、世界一小さな手作り資料館があります。
無人資料館で年中無休、24時間いつでも見れるそうです。

地域学芸員の方が館長を務められていて、在宅であればガイドを務めてくれるとのこと。
電話番号も書かれていました。

入ってみると本当に小さく、3、4人入るといっぱいになります^^;

そんな資料館ですが、入ると自動で解説が流れる近代的な仕組みになっていました。

中には、先ほど紹介した胎内仏のパネル写真などもありますし、賎ヶ岳の合戦のジオラマや、宇根地区の歴史年表、そして春日神社の神像のパネルも展示されていました。
春日神社は、冷水寺のお堂を最初に置いていた神社です。

春日神社拝殿の東側に冷水寺があって、現在の場所は明治の廃仏毀釈以後に移転したんですね。
「冷水寺」の名前の由来になった泉はその近くにあったそうです。

小さいけど、信仰の歴史がわかる、良い資料館ですね^^

観音の里 たかつきふるさとまつり限定!冷水餅と水まんじゅう

冷水寺 水まんじゅう

毎月8月第一日曜日には「観音の里たかつきふるさとまつり」が行われます。
この日は高月町をはじめとする伊香郡一帯に祀られている観音様が一斉に御開帳されます。

湖北地方には秀逸な観音様が多いのですが、なにしろ住職不在で地域の住民が管理していることもあって、普段は予約しないと拝観できません。
なかなかハードルが高いですよね^^;

冷水寺もその一つで、事前に予約しないと鞘仏さんを拝むことはできません。
なので、予約なしでたくさん見て回れるふるさとまつりは、仏像好きにはたまらないお祭になっています^^

冷水寺では、鞘仏さんが拝観できるだけでなく、その日にしか買うことのできない「水まんじゅう」と「冷水餅」が販売されています!

胎内あんこ堂

お店の名前は「胎内あんこ堂」という名前ですが、どうやらこのお店は宇根自治会がこの日だけ結成するお店のようですね^^
水まんじゅうは1個50円、冷水餅は1パック6個入りで300円です。

どちらも購入しました^^

まずは水まんじゅう。

冷水寺 水まんじゅう

注文すると、このように桶に沈んだ水まんじゅうをすくいあげてくれます。
見ているだけでも涼感がありますね^^

冷水寺 水まんじゅう

ツルンとしたのど越し♪
集落の人の手作りの和菓子ですが、かなり美味しいです^^

そしてこちらが冷水餅。

冷水寺 冷水餅

味はりんご味、ブルーベリー味、ピンクグレープフルーツ味の3種類で2個ずつのセットになっています。
こちらもどの味も美味しかったです^^

6個で300円はなかなかお得ですね。

「観音の里たかつきふるさとまつり」に行ったら、冷水寺は外せません^^

御朱印

冷水寺の御朱印です。

冷水寺 御朱印