龍谷ミュージアムで行われている春季特別展「水 神秘のかたち」を見に行きました。
この展覧会は、「水」と「信仰」がテーマ。
人間は水がないと生きていけませんが、水は貴重な資源なので、水があるところには必ず信仰が生まれます。
どのような形で信仰されていたのか?というのが今回の展覧会の内容です。
構成はこのようになっています。
第1章:水の力
第2章:水の神仏
第3章:水に祈りて
第4章:水の理想郷
第5章:水と吉祥
第6章:水の聖地
リーフレットはこちら。
表紙を飾っているのは、MIHOミュージアムが所蔵する木造宇賀弁財天像。
なんとも素晴らしい仏像ですね^^
水道が整備された今はそれほどまで水のありがたみを意識することは少ないかもしれません。
少々の水不足でも整備されたインフラのおかげでどうにかなりますし、ミネラルウォーターがどこでも買えますから、水に困ることはありませんよね。
でも昔は、水がすぐそこになければ死活問題になります。
なので水があるところに人が集まるわけですが、そうなると水に対する信仰が生まれます。
例えば東大寺の「お水取り」なども、水に関する儀式の一つですね^^
儀式では、水は身を清めるためのものとしても重要視されるようになり、より神聖視されるようになります。
展覧会では儀式で使う水瓶や香水杓が展示されていました。
「香水杓」というのは、中国茶の茶壷に杓のような長い取っ手をつけたようなもので、水の信仰はそういう独特な道具まで生み出してきたわけです。
そして信仰が高まってくると、今度は水が神格化されて、姿をもって祀られるようになります。
代表的なのが弁財天です。
元々はインドの神様なのですが、その起源はサラスヴァティーという河を神格化したものだといいます。
日本での弁財天は七福神の一人で、芸能の神、財宝を授けてくださる神として知られていますが、祀られている場所は池の真ん中などがほとんど。
つまり、日本でも水の神様とされているんですね。
そして、弁財天といえば、セットになっているのが宇賀神という、蛇体に老人の顔といった容姿の神様。
画像:ポストカードより
写真は大阪 本山寺の宇賀神(秘仏)なのですが、ものすごく不気味な神様ですね^^;
宇賀神は元々、日本で成立した穀霊神です。
それが最初に造形化されたのが、弁財天の頭の上だったんです。
そのように宇賀神の乗った弁財天を宇賀弁財天といいます。
今でこそ本山寺の宇賀神のように独立した宇賀神もいますが、弁財天の頭に乗ったのは、おそらくその蛇体から「水」を意識してのことだったのかもしれませんね。
というのも、龍や蛇は雲を自由自在に操って水を生み出すことができる生き物として神格化されているからです。
かつて弘法大師 空海が、水不足解消のために京都の神泉苑で雨乞いを行いましたが、その時の祈りで現れたのが善女龍王という神様。
以来、龍神は雨ごい祈祷の本尊として祀られるようになります。
善女龍王の写真はありませんが、こちらの掛け軸も展示されていました。
「善女」という名前から女性の姿で描かれるものだと思っていたのですが、今回の展覧会では思いっきり男性の姿でした^^
龍といえば、不動明王の持つ
ゴウゴウと燃え盛る炎を背に剣を飲み込む姿の迫力はかなりかっこいいものがあります。
左右に不動明王のお連れである制多迦童子、矜羯羅童子が立っていたので、もしや、と思ったのですが、この倶利伽羅龍は不動明王の化身なわけです。
そして不動明王の功徳を持ちながら、水にかかわり深い龍神として倶利伽羅龍は信仰されていたわけですね。
この絵は不動信仰と龍神信仰が重なってできたものなのでしょう。
ポストカードがあれば欲しかったのですが、ありませんでした><
この展覧会では、ほかにも、水が豊かな蓬莱山が描かれた蒔絵箱や、水とかかわりのある社寺の縁起絵巻、図屏風などが多数展示されています。
以前、MIHOミュージアムで行われていた「かざり-信仰と祭りのエネルギー」で学んだのですが、これらはおそらく、水にまつわる御本尊を荘厳するために作られたのでしょう。
昔の人は、それだけ水の豊富な出現を願い、水をありがたがったんですね。
この展覧会は、水に込められた思いをさまざまな方法で表現した名品を見ることができ、良い機会となりました。
「水 神秘のかたち」は、2016年4月9日~5月29日までです。