祇園祭は前祭と後祭に分かれますが、後祭に登場する鉾の一つが大船鉾です。
その名のとおり船の形をしているのが特徴ですね。
大船鉾は文献上の初出は応永29年(1422年)まで遡り、古い歴史を持つ鉾です。
応仁の乱(1467年)や天明の大火(1788年)で消失するという経験もあるのですが、その都度再興していました。
しかし元治元年(1864年)の禁門の変では大ダメージを受けて消失、それ以来ずっと休み鉾となっていたんですね。
それが2014年、150年ぶりに山鉾巡行に復活しました!
2014年の山鉾巡行の様子はこちら⇒2014年 祇園祭 後祭の山鉾巡行を見に行きました。
そんな大船鉾ですが、宵山の日は上に登ることができます。
ちなみに、長刀鉾と放下鉾は、伝統にのっとって女性の搭乗はできませんが、大船鉾は女性も登れます。
後祭で大トリをつとめる凱旋船、安産・勝運の大船鉾
大船鉾は、神功皇后をご神体とする鉾です。
神功皇后は古事記や日本書紀に登場し、仲哀天皇の后であり、のちの応神天皇の母とされます。
応神天皇を身ごもりながらも戦のために海を渡り、新羅・高句麗・百済を平定した伝説の人物です。
祇園祭では、占出山、船鉾、そして大船鉾が神功皇后を御神体にしています。
それぞれが伝説の中の場面を表しているんですね。
占出山は出陣前。
戦の行方を占うために鮎を釣る様子を表しています。
船鉾はいざ出陣の時。
鎧をまとった姿をしています。
そして大船鉾は凱旋の船という位置づけ。
鎧を脱ぎ、狩衣をまとった姿となっています。
巡行の時も一番最後を務めるんです。
そういう神様を乗せて巡行するので、大船鉾では安産・勝運のご利益が頂ける鉾となっています。
2016年は龍頭が復活!外側の懸装品を鑑賞
船鉾や大船鉾は、乗り物としてわかりやすい「船」の形をしているので、馴染みやすい鉾ですね。
そのフォルムを見るだけでも美しいのですが、さらにそこには懸装品が掛けられます。
まずは背面。
艫掛けの鳳凰の刺繍が目立ちますね。
背面には龍。
横の水引に描かれているのは、飛魚なのだそうです。
前掛にも龍。
戦いに勝ったこの船には水の神である龍神がついていて、進行する周りには飛魚が泳いだり飛んだり、そして空には鳳凰が飛んでいる。
全体でそんな場面を表しているように感じますね。
そして船首には、今年(2016年)から復元新調された龍頭が取り付けられていました。
この写真だけだと大きさがわかりにくいですが、高さは約2メートル近くあって、間近で見ると大きいんです!
この龍頭、前祭の宵山の時には建物の中で展示されていたのですが、畳と比べたら大きさがわかります。
こんな大きいものが船首に取り付けられているのですが、実物を見ると、迫力がありました。
今年は白木でしたが、今後は漆塗りの上に金箔を施すのだとか。
今後も楽しみですね。
大船鉾へ搭乗
大船鉾への搭乗は、拝観券が必要です。
拝観券は500円。
私はパンフレット付の拝観券を千円で購入しました。
私が訪れたのはちょうどお昼時ごろ。
拝観券を購入して10分ほど並んで町会所に入れました。
会所の入り口には大旗がありました。
大船鉾は軍船ですので、この旗は巡行の時に将帥旗として掲げられます。
2階に上がると、懸装品が展示されていました。
下は龍が描かれた旧前掛と後掛。
まだまだ現役で使えそうですが、傷めないように保存しているのでしょうね。
屋根の軒部分に取り付けられる天水引は、黄金に輝いています。
船首に掲げられる大金幣。
結構な大きさなのですが、横の扇風機は普通の大きさなので、それと比べると大きさがわかりますね。
この大金幣は、先ほど紹介した龍頭と同じく船首に取り付けるもの。
文化10年(1813年)に作られたもので、禁門の変にも耐えて残っています。
今年から龍頭が復活したので、今後は龍頭と大金幣を隔年で取り付けるのだそうです。
そしていよいよ大船鉾へ乗船!
他の鉾では乗るときに急な階段になっていたり、そのうえ手すりが低くて怖いところもあったのですが、大船鉾は最近作った鉾だからなのか、船だからなのか、橋を渡ってスグ乗れるという安心設計です^^
2階から見ると、龍頭は船首から首を出して、行き先の安全を見守るような感じで乗っているのがわかります。
船内はこのような感じ。
他の鉾では欄干に座って演奏するので、動いていると怖いかもな~、なんて思っていたのですが、大船鉾は座りやすそうな席が設けられています^^
さすが船ですね!
船から下を見下ろすとこんな感じ。
龍頭が見ている眺めも見てみたいのですが、残念ながら前方は宵山期間中は提灯で視界をふさがれているので見えませんでした。
全体としては、暑い中でも2階は風当りがよく、気持ち良い空間でした。
ただ、巡行の時はこの中に40人ほど乗るそうですから、乗る人は大変かもしれませんね^^;
御朱印は手書きです。
祇園祭では、各山鉾に御朱印があるのですが、ほとんどは自分で押すスタンプタイプ。
でも、大船鉾はきちんと書いてくれる普通の御朱印なんです。
料金も300円ですので、神社やお寺で頂くものと同じですね。
ただ、御朱印は鉾の拝観よりも人が並ぶほど人気で、私の場合はお昼過ぎで30分ほど並びました^^;
書く人は2人態勢だったのですが、それでも書くとなると時間かかりますね。
途中、お酒の試飲や、お菓子を買って食べながら待ちました。
お酒は、大船鉾を表す「凱旋」のラベル。
飲めない人でも、樽型のものなら飾れるのでお土産にできます。
購入したお菓子は、若菜屋の食べられるちまき。
祇園祭の
でも最近は、それとは別に食べられる粽が売られているんですね。
その中でも有名なのが若菜屋の粽です。
開けてみると、冷たい白い餅が入っていました。
ねっとりとはしているのですが、冷たいので粘りすぎず、適度なツルン感。
丁寧に作られている感じで美味しかったです^^
そしてそういうものを味わいながら列に並ぶこと30分。
御朱印を頂きました♪
やはり手書きだとありがたみを感じますね^^
御朱印所には、御神体の神功皇后も祀られていました。
御神体ということで撮影は禁止されていたので写真はありませんが、きちんと手を合わせておきました♪
ただ、本来は大船鉾には神功皇后以外にも、渡海の無事を守る三柱の神様がいらっしゃるんですよね。
- 住吉明神:神功皇后の前方を守る海の神で、住吉大社の神様。
- 鹿島明神:神功皇后の後方を守る武神で、
武御雷神 とも呼ばれる。鹿島神宮の神様。 - 安曇磯良神:舳先に乗る龍の神様。
御神体として残るのは神功皇后のみで、三柱の神様は今後復興していく予定なのだそうです。
勢揃いした様子も早くみたいですね^^