龍谷ミュージアム 地獄絵ワンダーランド

9月23日から開催中の「地獄絵ワンダーランド」、早速行ってきました。

今年は夏に奈良博で源信展をやっていましたし、日本人の死生観を学ぶには絶好の年ですね。
今回の展覧会では、源信以降から近現代まで、地獄にまつわる作品が展示されています。

この展覧会では、代表的な地獄絵の「六道絵」や「十王図」が展示されているのはもちろんですが、それを短い文章でわかりやすく解説されていました。
地獄絵ビギナーも入りやすいかもしれません^^

そしてこちらがリーフレット。

地獄絵ワンダーランド リーフレット

描かれているのは閻魔様ですが、恐ろしい様子を思い描く「地獄」とはちょっとかけ離れていますよね。
絵本作家が描いた子供向けの絵のような感じもしますし、笑っているようにも見えますし^^

でもそこに、今回の展覧会の面白さがありました。

時代によって描かれ方が違う、地獄絵

日本人が思い描く死後の世界の原点は、平安時代の僧侶、源信が「往生要集」を著したことに始まります。
往生要集には六道輪廻についてや極楽往生への道が記されているのですが、その中でも特に地獄に関するものが事細かく書かれています。

地獄をリアルに描いたのはおそらく、「こんな恐ろしいところに行かないように、極楽往生の道をしっかり歩みなさい」ということなんでしょうね^^
そんな往生要集の影響を受けて、今まで多くの地獄絵が描かれてきたわけです。

なので地獄絵は平安時代により近いほど、地獄の恐ろしさを痛感するような世界観で描かれています。

例えば、今回の展覧会のものではありませんが、源信展で展示されていた地獄草紙の一つ、「鉄磑所」。


※画像 「源信展」のリーフレットより

人の物を着服したものが落ちる地獄。。
罪人は獄卒に鉄の臼でつぶされてしまいます。

そして、源信の地獄の概念にありがちなのが、一度つぶされてもまた再生して、同じ刑を受けなければならないということ。
繰り返し繰り返し、同じ刑を受け続けるのです。

これは苦しいですよね~><

このような絵で、平安時代の貴族達は地獄に対して恐怖の念を抱いていたのですが、時代が下ってそのような文化が庶民に下りてくると、様子が変わってきます。

特に庶民文化が花開くようになった江戸時代には、まるで地獄を楽しむかのような作品が登場するんです^^

こちらは十王図。

十王図
※ポストカードより

東京の東覚寺蔵の地蔵・十王図(部分)です。

閻魔様がまるで笑っているような描き方です。
絵のタッチも絵本のようですね^^
怖い印象がなくなっていて、どちらかというと楽しんでいる感じです。

そして、笑っているのはこの絵だけではありません。
こちらは兵庫県・東光寺蔵の木造 十王坐像・葬頭河婆坐像・白鬼立像(部分)。

十王像
※ポストカードより

こちらも閻魔様と葬頭河婆が歯茎むき出しで笑っています。
他に類を見ない面白い像ですね^^

そしてこちらの十王図は、ちょっと上手な幼稚園児が描いたようなヘタウマ系^^

十王図
※ポストカードより

そのゆるキャラっぷりに思わずクスッと笑ってしまいます^^

そしてこちらの地獄図巻(部分)は、職業別の地獄を描いた戯画です。

地獄図巻
※ポストカードより

何の職業名は忘れましたが、おそらくウナギ屋さん?でしょうか^^
それが地獄に落ちると、今度は自分が調理される立場になってしまうようです。。

最後は歌舞伎役者が亡くなった後に、その役者を偲んで描かれたという死絵。

死絵
※ポストカードより

描かれているのは、人気絶頂の中、謎の死を遂げたという八代目 市川團十郎。
死後の世界でも歌舞伎をやっています^^

このように、江戸時代には地獄の恐怖を超越して、遊び心を持って描かれた作品が登場してくるんですね。
まさに地獄絵ワンダーランド。

最後に、現代の作品としては、水木しげるの「水木少年とのんのんばあの地獄めぐり」の原画が展示されていました。

原画の撮影はできませんが、撮影OKのパネルが用意されていました。

水木少年とのんのんばあの地獄めぐり

こうやって見ていくと、往生要集から生まれた恐ろしい地獄絵が、現代の漫画に繋がっているのを実感しますね^^

展覧会は、2017年11月12日まで。