前回、伏見稲荷大社の麓の境内(奥社奉拝所まで)を紹介しました。
その続きです。
前回の記事:全国のお稲荷さんの総本宮、伏見稲荷大社を参拝しました。
伏見稲荷に来たことがある方は、千本鳥居をくぐったところにある奥社奉拝所までは参拝したことがあると思います。
有名な千本鳥居も見て、その奥が行き止まりのようになってお参りするところがありますので、ここが最終地点だと思う方が多いようなのですが、千本鳥居を超えたところに稲荷山に登る道があります。
実は、後ろにそびえる稲荷山こそが伏見稲荷で祀られている神様そのものであって、ここ伏見稲荷の敷地に含まれているんです!
稲荷山まで含めた広さはおよそ、甲子園球場22個分!
奥社奉拝所とは、後ろにそびえる稲荷山を遥拝する場所なんですね。
奥社奉拝所は、稲荷山まで登れない方がお参りする場所です。
本来は、稲荷山まで登るのが正式な参拝なのです。
稲荷山に登って参拝することを京都の人は「お山する」と言います。
高さ233メートル、4キロの道を2時間くらいで歩けます。
千年前、清少納言も枕草子にお山する様子を描いていますので、お山することは伝統的な参拝の仕方なんですね。
なので、稲荷信仰の真髄を見るなら、稲荷山は登らないといけません。
24時間いつでも登れるようになっていますので、夜に登って京都市内を見下ろす夜景を見ることもできますよ^^
稲荷山には、1万基とも言うおびただしい数の「お塚」が祀られていて、麓とは全く違う光景が見られます。
お山にはたくさんの見どころがあって、自分にあったご利益をお持ちの神様に出会えると思います^^
その中でも参拝しておきたい主だった神域はこちらです。
登り順に一つずつ紹介します。
「値上がり松」、「膝松さん」と親しまれる奇妙大明神
奥社からお山に向かう石段上りの参道左に、つい見過ごして通り過ぎてしまいそうになる小祠があります。
それが奇妙大明神という松の木です。
しかし、2012年の4月に参拝した時にはご神木は枯れていて、このような姿に^^;
コンクリートや布などで補強されていますが、それでも根が切れてしまっています。
大丈夫でしょうか?^^;
説話としては、このように言われています。
- 値上がり松・・・根っこが2本浮き上がっていることから「値上がり松」と言われ投資家から崇敬を受けている。
- 膝松さん・・・下からくぐると神経痛や肩こりに効果があると言われ「膝松さん」と親しまれてている。
(現在は危険なため、くぐるのは禁止されています)
ご神木は枯れていますが、俗信はまだ生きているそうです。
人生で迷っている時に参拝したい勝負ごとの神、熊鷹社
すぐ向かいには「竹屋」というお店があって、熊鷹社へのお供え物が売られています。
ベンチもありますので、ここで休憩することもできます。
竹屋には和ロウソクが売られているのですが、熊鷹社にお供えするロウソクは和ロウソクなんですね。
賽銭代わりに和ロウソクを灯すことで、勝負ごとに強くなると言われています。
祀り方を見れば、麓の正殿や奥社とは全然違っています。
これがお塚信仰なんですね。
和ロウソクは芯に和紙を使っているので、炎の勢いがあり、大きく揺れていました。
これだけの炎に囲まれて真ん中にお塚や狐が照らされている様子は幻想的です。
今でも信仰が息づいているのがわかる場所です。
熊鷹社と谺ヶ池にはこのような言い伝えがあります。
- 家出人や失跡者など尋ね人がある人が谺ヶ池の畔で手を打つと、反響のする方角に手がかりが得られる。
- 熊鷹社で願い事、頼み事を済ませ、谺ヶ池の畔で柏手を二回打つと、幸運を示す方向からコダマが帰ってくる。その時、コダマが近くから帰ってきたように感じれば、願い事は早く叶い、遠くから帰ってきたように感じれば、成就は遅くなる。
熊鷹社にお参りした後は、ぜひ谺ヶ池に向かって柏手を打ってみてください。
衣食住の神、三徳社
三つ辻を超えたところに、三徳大神を祀る三徳社があります。
祀られている三徳大神は、衣食住の三つの徳をもっているそうです。
三徳社の向かいにある三徳亭は、ここで昼食をとるお客さんも多いようです。
見晴らしの良い休憩スポット、四つ辻
三徳社からは、距離はわずかですが急な勾配があって、それを抜けると山の中腹で、四方向からの道が合流する四つ辻につきます。
四つ辻は休憩スポットになっていて、登ってきた道を振り返ると、京都市内の南地域を望めます^^
そしてここには、西村和彦さんの実家で有名な「仁志むら亭」もありますよ^^
ここから先は周回路ですが、昔から御膳谷に向かう時計回りの道が正式と言われています。
三叉路の真ん中、下り坂になっているところが正式の道ですが、元気ならその前に左側の道、「権太夫」と書かれた鳥居の先の「荒神峯」に先に行っても良いと思います。
ほんのちょっと登るだけですからね^^
人気運の神、荒神峯(田中社)
四つ辻から荒神峯に登ると、田中社があります。
ここは稲荷山の7神蹟の一つで、権太夫大神が祀られています。
人気を得られる御加護があると言われていて、古くから芸事・役者の参拝者が多く、周りには明治時代の歌舞伎役者の奉納によるお塚が点在しています。
ちなみに7神蹟は、以下の7ヶ所です。
- 荒神峯
- 御膳谷
- 長者社
- 一の峯
- 二の峯
- 間の峯
- 三の峯
邪気払い、金運の神、大杉社
四つ辻から正式ルート(左回り)に進むと、大杉社があります。
祀られているのは神様が降臨して悪い病気を追い払ったと言われている、古い杉のご神木です。
なので建材や建築関連の参拝者が多いのですが、建築とは関係のない方も見逃してはいけません。
ここは商売繁盛や金運のご利益もあるとのこと。
忘れずに参拝しておきましょう^^
先見の明を授ける神、眼力社
個人的には、必ず参拝しておきたいと思っている社の眼力社です^^
「眼力さん」と親しまれています。
手水舎も面白いですね^^
ご神徳としては、
- 眼の病気が良くなる
- 先見の明・眼力が授かる
と言われています。
企業経営者や相場関係者の参拝も多いそうです。
私も仕事柄、眼が痛くなることが多いですし、先見の明も欲しいですからね^^
そしてなんと、眼力さんの公式サイトもあります!
私は眼力さんの前に「眼力亭」というお店があって、そこで「謙虚と感謝」と書かれた、干支で選ぶ携帯ストラップを夫婦二人で買いました。
干支以外に、色でもご利益が違うようです。
購入と同時に、お店のおばちゃんがストラップに向かって火打ち石でカチカチしてお清めしてくれました!
ご利益に磨きがかかりそうですね^^
眼力社前のお店には、ここでしか買えない御守りがたくさんあります。
「謙虚と感謝」の書が人気なのだそうで、この書を部屋に飾り、朝夕、書かれているとおりに「謙虚と感謝」を心がけていると、数ヶ月ほどで不思議と良い方向に進みはじめるといわれているそうです。
稲荷山の神に神饌を備える場所、御膳谷
稲荷山の三ヶ峯の渓谷が集まる要の地が御膳谷です。
稲荷山の神々にご神饌(お供え物)を供える場所とされています。
だから"御膳谷"という名前がついているんですね^^
現在も朝夕2回の日供が行われているそうですよ^^
毎年1月5日はこの場所で、大山祭が行われます。
秋に峠から眺める紅葉もなかなかのものらしいです♪
御膳谷奉拝所では、稲荷山の御朱印が頂けます。
「奉拝」ではなく「登拝」となっているのが、神奈備の山らしいですね^^
御膳谷から先はまっすぐ向かう道と谷に下る迂回路があります。
まっすぐ向かう道を進むと、薬力社と薬力の滝、迂回路をゆくと清滝と清明の滝があります。
その後は合流します。
無病息災・身体健康の神、薬力社
お薬の神様、薬力社です。
薬力社も眼力社と並ぶ人気の社で、「薬力さん」と親しまれています。
薬力大神は、無病息災・身体健康の御加護が得られると言われています。
病人の家族の代わりに千羽鶴を持って奉納していく方もいるそうです。
近くには喉の神様「おせき大神」のおせき社もあります。
そして、薬力社の向かって左川から岩清水が湧いていて、その水で薬を飲めば良く効き、また発熱のとき、その水で頭を冷やせばすぐに熱が下がると言われています。
このご神水でゆでた「薬力健康たまご」が、薬力社向かいのお店、薬力亭で売られています。
薬力亭にはその他にも、お狐さんの首にかける、奉納用のよだれかけや、祝詞や経本も売られています。
信仰熱心な方は「稲荷心経」などを唱えていますね^^
薬力さんも公式サイトがあります^^
ものづくりの神様、長者社
七神蹟の一つ、長者社です。
ここは、雷神・龍神の御座所で、長者社横のお塚群の階段を上ったところには、「劔石」または「雷石」と呼ばれる、注連縄を巻かれた巨岩があります。
なぜこんなところに不自然な形で置かれているのか、不思議な岩なのですが、この岩は異形の僧が霊力で雷を縛り付けたという言い伝えもあります。
だから雷石と呼ばれているんですね。
また、神蹟の左には「焼刃の水」と呼ぶ井戸があります。
稲荷山の伏流水が流れていて、ご神水として持ち帰る参拝者も多い井戸です。
ここで平安時代の刀工・三条宗近が「小狐丸」という名刀を鍛えたのだそうです。
そういう場所なので、鉄工業・製造業関係者から信仰されています。
ここから先は一気に一の峯に登る、稲荷山一番の急勾配の暗い階段があります。
距離はそんな大したことありません^^
人気・芸能の神、一の峯(上社)
稲荷山の頂上、一の峯です。
末広社とも言われ、人気・芸能・指針の英知を受けるとされています。
また、末広がりに商売繁盛の御加護を得るとも言われています^^
なのですが、実は神様の正体は謎なんです。
「末広大神」と書かれているのですが、祀られているのは
大宮能売大神は、古事記にも登場する芸能の神、
つまり、末広大神は天鈿女命と同一神なのかもしれません。
とはいえ、この場所は稲荷大神が舞い降りた場所でもありますから、場所のパワーは大きいはず。
おみくじも無料で引けますので、ぜひ引いておきましょう^^
ちなみに、残念ながらここからは、街を見下ろせるような景色はありません。
(木が高いです^^;)
ここからは下りで、二の峯、産の峯とだんだん下っていきます。
道開きの神、二の峯(中社)
青木社とも言われる二の峯の青木大神は、記紀神話にも出てくる猿田彦大神(佐田彦大神)とも言われています。
猿田彦大神といえば、道開きの神様。
新しいことを始める場合はもちろん、今壁にぶつかっているものがあれば、力添えをしてくれるはずです。
青木大神は厳しい気性の神様と言われていますが、一心に願えば非常に情の厚い神と言われています。
しかしここでも一の峯同様、なぜ「青木大神」という名前で呼ばれているのか、謎のままです。
間の峯(荷田社)
伊勢社とも言われる間の峯(あいのみね)の荷田社は、稲荷神を最初に祀った秦氏や荷田氏の流れを汲む神蹟です。
稲荷信仰の原点がここにあるということですね^^
伏見稲荷の主祭神、三の峯(下社)
白菊社とも言われる三の峯の白菊大神は、伏見稲荷の主祭神、
こちらもまた、「白菊大神」と呼ばれている理由は謎なんですよね。
文献によると、稲荷山の三ヶ峰の神々は、本殿に祀られる中央三座の神に対応すると言われています。
なので一の峯の大宮能売大神、二の峯の佐田彦大神、三の峯の宇迦之御魂大神となっているのですが、実はこの順番も当たっているのかどうかはわかっていないんですよね^^;
でも、現状そのように信仰されているのなら、それが正しいのかもしれません。
三の峯を降りたら、四つ辻の「仁志むら亭」のところに戻れます。
稲荷山麓の奥社から4キロで2時間の散歩道ですが、その間にお茶屋が結構ありますので苦なく登れます^^
伏見稲荷大社は見どころいっぱいですね。
さらにその魅力を深く知っていくと、何度も行きたくなるところです^^
ぜひお山してみてください^^