平安時代の京都は、雅なイメージがありますが、一方で怨霊や物怪に恐れおののいていた時代でもありました。
皇位継承争いや政争が度々あって、それによる恨みつらみは怨霊化、妖怪化する、と考えられていたのです。
これらは自分の心の内の恐怖が生んだものだと思いますが、こういうものが本気で恐れられ、陰陽道の占星術などを使った対策が行われていた時代でもあります。
京都は「風水の都」とも言われますが、そういう理由も一つあるんですね。
そしてこの本は、平安京を護る陰陽師、怨霊や祟りを恐れる王朝人、都に出没する鬼や天狗などの伝説が残る地が数多く紹介されています。
この手の本は色々出ていますし、オカルト的な要素がほとんどなのかもしれませんが、現在にも伝わっているものには、昔の人の思いが込められているということでもあります。
京都は魔界のテーマパークです。
必ずしも史実に基づかなくても、あえてこういう情報を手掛かりに現地に出かけてみて、どこまでが真実でどこまでがオカルトなのか、考えを巡らせながら旅するのも面白いですね^^
そしてこの本は、知らないと通り過ぎてしまうようなマニアックな場所も載っています。
例えば、丑の刻参りの話が残る
現在も、下京区松原通堺町入ルにあります。
こういう場所は、知らないと通り過ぎてしまう理由は、その場所が一見何ともないところだから。
これでは道を歩いていてもわかりませんよね^^;
その場所というのはここです。
「え?ここ入っていいの?」
と、躊躇してしまいそうですが、ここは入っても大丈夫です。
狭い通路は隣の建物の民家の入り口にもなっていますが、奥に行くと鳥居が見えてきます。
鳥居の先にあるのは命婦稲荷社。
町内の氏神様として祀っているそうです。
「鉄輪の井戸」はその横にありました。
この井戸に伝わっているのはこういう話です。
昔、旦那の帰りが少しでも遅いとすぐに当たり散らすという、大変嫉妬深い女がいたのですが、とうとう夫はそれに嫌気がさしてしまい、他の女性のところに夜な夜な通うようになってしまいました。
それを知った女は嫉妬のあまり、貴船神社に行き、頭に鉄輪を逆さにして戴き、松明を口にくわえ、「憎い、憎い」と藁人形に五寸釘を討ち続けたのです。
一方でこのところ体調不良が続くことを不審に思った夫は、安倍晴明に相談、すると晴明は妻が丑の刻参りをしていることを見破りました。
そして、呪詛から防御するための祈祷を行ったのです。
そして迎えた満願の夜、夫の枕元に女が亡霊のように現れ、連れ去ろうとしますが、夫の周りには晴明が使わした式神がいて、護っているのでどうすることもできません。
狂気にかられて挑みかかるもどうしようもなく、しかし殺してやりたいと怨念は残ります。
思いあまった妻は、側にあった井戸に身を投げてしまったのです。
この井戸の側にある祠は、そんな哀しい女を不憫に思った近所の人々が建てたそうです。
そういう伝説が残っている井戸ですが、昔から縁切井戸として有名だったようです。
なんでも、この井戸の水を相手に飲ませると、相手との縁が切れるそうなんですよね^^;
ただし、地下鉄工事の影響で水は枯れてしまい、現在は汲むことができません。
それでも、自分で水をペットボトルなどで持参してこの井戸にお供え、祈りを捧げて持ち帰る、という人もいるそうなんです。
縁切りを所望の方は、水持参を忘れずように^^
実はこの場所、私が好きなイタリアンの店のすぐ近くにあって時々通るのですが、知りませんでした^^;
この本には他にも、化鳥の
なかなか面白い本ですよ^^