大人のための修学旅行

奈良に旅行すると、大仏を見て、鹿と戯れて、あとはなんとなく見て回って・・・
という感じになる方は多いと思います。
なんとなく見て回っているうちは、特にお寺などはどれも同じようにしか見えないですよね。

でも、きちんと歴史を知れば、同じようなお寺でも、それぞれ個性があることがわかるようになってきます。
そういう風に、知的に奈良の旅行を楽しめるようになるための本がこの「大人のための修学旅行 奈良の歴史」です。

古墳時代から始まって、聖徳太子のいた飛鳥時代、大化の改新から平城遷都・平城京の整備されるまでの白鳳時代、天平文化が華開いた奈良時代まで、時代別に分かれて解説されています。

ただ、教科書とは違って、名所旧跡を通して歴史を語っているので、旅目線で楽しめる内容になっています。
まさにタイトル通りの本です^^

私はこの本を読んで、改めて飛鳥や斑鳩、藤原京や平城京周りに行きたくなりました^^
よく知っている東大寺も、もう一度新たな視点で参詣したくなりますね。

目次を紹介すると、以下のような章立てになっています。

  • 1章:日本の原点、大和朝廷はいかにして生まれたか
  • 2章:中国の先進技術を取りこんだ聖徳太子と飛鳥文化
  • 3章:大化改新がもたらした白鳳文化の幕開け
  • 4章:天武・持統天皇が築いた律令制度と藤原京
  • 5章:平城遷都で完成した古代国家の全貌
  • 6章:華やぐ天平文化の陰で混迷する朝廷政治

このように、時代ごとに解説されているのですが、各章ごとに必ず地理的背景が解説されています。
「聖徳太子はなぜ斑鳩という場所をを好んだのか?」とか、「なぜ飛鳥に都があることに限界があったのか?」など、教科書には書かれないことも書かれているんです。

飛鳥時代から京都への平安遷都までは色々な所に都が移っているのですが、移った理由もわかりますし、移った先で生まれた文化のことや、寺社が建てられて信仰された経緯も分かりやすいです。

そういうことが地域ごとにわかるので、一つ一つの名所史跡だけでなく、地域として行きたくなってしまいます^^

その中でも特に行きたいと思ったのは、明日香村にある甘樫丘。
ここは、蘇我蝦夷、蘇我入鹿の館があった地なのだそうですが、植山古墳から甘樫丘に登るコースを歩くと良いのだとか。
このように書かれています。

植山古墳から、田園風景の中を一気に甘樫丘まで歩くコースをすすめたい。
最初に甘樫丘に登り飛鳥の全体像をつかむのがよいからである。

甘樫丘は、古代に大野丘とよばれていた丘陵の東端にある。
そこから西南西を見ると二上山から葛城、金剛の山々がのぞめる。その手前の近鉄飛鳥駅の南方の丘陵地が、古代に檜隅(ひのくま)とよばれた渡来系の技術者が集住した地である。

西北西に畝傍山があり、そのふもとに縄文時代以来の人びとの集住地、樫原遺跡がある。その手前が豊浦(とゆら)の地である。

北方には、天香久山、そして甘樫丘のそばに小さな雷丘がある。そこは天武天皇の館があったところで、「万葉集」の柿本人麻呂の

「大王は神にしませば天雲の 雷の上にいおりせるかも」

という和歌をつたえる。
甘樫丘の東方には飛鳥坐(あすかにいます)神社の社や飛鳥寺、南方には橘寺や石舞台古墳のある丘陵が見える。
飛鳥めぐりの観光客の多くは甘樫丘を訪ねるが、ここに述べたような全景を押さえると飛鳥の土地柄が分かってくる。

この光景が見たくなりました^^
土地柄がわかると歴史もわかりやすくなりますので、この本はそういうガイドブックとしてもなかなかの良書です。

あまり歴史を知らない人でもわかりやすく解説されていると思いますので、奈良に旅行に行く方は行く前に読んでおくと役に立つと思います。

奈良編の他に、「京都の歴史・上」、「京都の歴史・下」もあるようです。