お酒の神様として有名な松尾大社。
実は、京都で最古の神社なんです。
正式名称は松尾大社です。
元々はこの地方に住んでいた住民が生活守護神として祀っていたのが起源とされているのですが、5世紀頃に朝鮮から渡来してきた秦氏がこの地を開拓し、総氏神として祀ったので、時の天皇の文武天皇が大宝元年(701年)に社殿を造営されました。
なぜ天皇が社殿まで造営したのか?というと、秦氏は財力も智恵も持っていて、日本に様々な技術をもたらしました。
天皇に信頼を置かれていたんでしょうね^^
御祭神は、
- 大山咋神
- 市杵島姫命
の2柱です。
神領は、背後の松尾山を含む約12万坪!
社殿だけの参拝もできますが、申請すれば山も登れるのでそれを合わせるととにかく広いです^^
松尾大社は賀茂社と並ぶ皇城鎮護の社
松尾大社は、平安遷都以降は平安京を守る皇城鎮護の社として厚く信仰されるようになります。
それは、「賀茂の厳神、松尾の猛神」と称され、賀茂社と並ぶほどの力を持っていたんです。
昔の神領は今よりも広く、鈴虫寺から渡月橋のあたりまであったという記録が残っていますが、明治時代の廃仏毀釈の影響で領地が今の広さになっています。
松尾大社の御祭神について
松尾大社の裏にある松尾山に鎮座している大山咋神は、大山に杭を打つ神ということで、山を守る神様です。
山にいらっしゃるので、本殿の後ろは松尾山になっています。
そして、比叡山の向こう側にある滋賀県の日吉大社でも御祭神として祀られている神様ですね。
日吉大社でも本殿は山を背にしています。
比叡山は平安京の鬼門にあたりますので、日吉大社の神は鬼門を守る神でもあるわけです。
そして、松尾大社のある方角は、平安京の裏鬼門にあたります。
鬼門・裏鬼門を守る神様ということで、皇城鎮護の社とされたのかもしれません^^
もう一柱の神、市杵島姫命は、福岡県の宗像大社と広島県の厳島神社でも祀られている神様です。
祀られている場所を考えると、秦氏が朝鮮から航海してきた道に通じますね^^
海上守護の霊徳があることから、ここでも祀られているのではないか?と伝えられているそうです。
松尾大社の絵馬にはしゃもじ形の絵馬がありますが、これは厳島神社のしゃもじから来ているようです。
市杵島姫命は、神仏習合の思想で弁財天と習合していますが、弁天様の持つ琵琶の形がしゃもじと似ていることから、宮島ではしゃもじが有名になっています。
松尾大社では、大山咋神、市杵島姫命、この二柱を合わせて松尾大神としているのですが、松尾大神がお酒・醸造の神様としても祀られるようになったのは、中世以降のことです。
山の神様なのになぜお酒というところに信仰が広がっていったのか?ということですが、二つの説があるそうです。
一つは、秦氏がお祀りしている神様、というところからです。
秦氏は、朝鮮の方からお酒造りの技術を日本に持ってきてくれたんですね。
そしてもう一つは神話になりますが、その昔、松尾山で神様が集まって話し合いをする日があったんです。
全国色々なところから神様が集まってくるのですが、松尾の神様は、わざわざ来ていただくので他の神様におもてなしがしたいと思い、松尾・嵐山で採れるお米や山からの湧き水を使って、一晩で美味しいお酒を作ったのだそうです。
そして山のスギの木を使って、トックリなどの器類を作って振る舞われたそうです。
そのような二つの言い伝えが重なるように中世以降に広まって、お酒を作る神様となっていったわけです。
なので、日本酒だけでなく、ビール会社、焼酎を作る会社、お酒を扱う会社から敬われていますし、醸造を司る神様でもありますから、醤油、お味噌などを扱う会社の方も奉納しに来られます。
鳥居に吊るされている枯れ枝
松尾大社の参道に入って、二の鳥居にたどり着くと、鳥居の下には枯れ枝が吊るされているのが目につきます。
これは何なのか、神主さんに聞いてみました。
これは榊の枝で、このように吊るすのを脇勧請というのだそうです。
通常の年だと12本、うるう年だと13本ぶら下がります。
その昔、榊の枯れ具合によって1年間、毎月の農作物の出来、不出来を占っていたのだそうです。
どう枯れればどう判断するのかはわかっていないのですが、松尾大社ではその名残として毎年年末に新しい榊をかけ、1年間かけ続けているのだそうです。
帰りに数えてみたところ、確かに12本ありました^^
撫で亀さんと、撫で鯉さんの正体
松尾大社の境内の所々には亀や鯉がいます。
まずは楼門を入って、一ノ井川を渡ったところにある「撫で亀」。
手水舎も亀です。
本殿近くにも「撫で亀」、「撫で鯉」が置かれています。
そして庭園受付の横にも、
なぜ亀と鯉がたくさんいるのか?
松尾大社では、亀と鯉は神様の遣いとされているんですね^^
その昔、大山咋神様が丹波地方を開拓された時、開拓の状況を視察する時に使ったのが亀と鯉なのだそうです。
川を遡る時、流れの急な所は「鯉」、ゆるやかな所は「亀」にのって視察に行かれたのだそうです。
類例の少ない両流造の本殿
松尾大社の本殿には特徴があります。
それは、「両流造」という形式で造られているんです。
※ 画像:パンフレットより
側面から見た時、前後両方向にキレイな曲線を持った屋根になっているんです。
この形式のものは、厳島神社、宗像大社に伝えられているくらいで、例が少ないのだそうです。
屋根の後ろより前の方が長い「流造」という形式のものは多いのですが、両流造では両方向に同じ長さで流れているんです^^
パンフレット写真では見にくいですが、松尾大社では神職さんの説明付の本殿参拝ができます。
回廊の中に入ることができますよ^^
神聖な松尾山を登る、磐座登拝
本殿裏にある神聖な松尾山。
昔は神職以外の登拝を禁じた神聖な場所ですが、実は、登ることができます^^
頂上には社殿祭祀以前に祀っていた磐座があります。
そこで直接拝めるんですね。
とは言っても、勝手に登ることはできません。
今でも神聖な場所ですので、カメラを持ち込んではいけない、草木・キノコ・土石類などを取ってはいけないなど、色々と決まりごとがあって、登拝受付所での許可が必要です。
(登拝初穂料:1,000円)
そして登る時は2人以上で登拝することになっています。
1人では登ってはいけないんです^^;
理由は、最近野生の猿が頻繁に出没しているそうで、1人だと怪我をした時に危険だからとのこと。
入山受付も、午前9時~午後3時までとなっていますので、登りたい方は早い時間に行くようにしましょう。
(ただし、正月3ヶ日、中大祭地当日は入山禁止)
松尾山は200mくらいの山で、30~40分くらいで登れるそうです^^
写真は、庭園拝観の帰りに入口を撮ったものです。
ここから先はカメラ禁止です。
延命長寿・蘇りの水 霊泉「亀の井」
松尾大社には、「亀の井」という霊泉があります。
この水は、松尾山から流れている霊水で、延命長寿・蘇りの水と言われてています。
また、この水を持ち帰って酒の元水として造り水に混和すると美味しいお酒が出来上がるとのことから、持ち帰る酒造家も多いのだそうです。
有料の庭園拝観の入口からちょっと入ったところにありますが、庭園拝観しない場合でも庭自体は通らないので無料でいけます。
直接飲むのもOKなのだそうで、実際飲んでみるととってもやわらかくて美味しい水でした。
ぜひ水筒持参で行きたいところですね^^
ただし、水量が弱いので時間帯によっては順番待ちになるそうです。
霊亀の滝の霊亀伝説
松尾山は別雷山とも言われていて、7谷に分かれているのですが、そのうちの一つ、社務所裏の渓流を御手洗川と称しています。
そこから亀の井に繋がっているんです。
亀の井から山の方向に川と滝があって、「滝御前」と書かれた鳥居があります。
ここには霊亀伝説が2つあるんですね^^
一つは奈良時代の第44代 元正天皇(奈良時代)の御代。
元正天皇の和銅7年(715年)に、この谷から
『首に三台(三つの星)をいただき、背に七星を負い、前足に離の卦を顕わし、後足に一支あり尾に緑毛・金色毛の雑った長さ八寸の亀』
が現れたそうです。
どういう亀かはよくわかりませんが、とにかく特殊な亀ですね^^;
それを朝廷に参上したところ、元正天皇が「これはめでたい!」と、元号を「和銅」から「霊亀」へ改元し、亀は元々の谷に戻したという云われがあります。
そしてその次の第45代 聖武天皇の御代。
神亀6年(729年)にまたこの谷から出てきた亀の背中に『天王貴平知百年』の文字が書いてあったそうです。
これは天王、つまり「聖武天皇の時代は平和が100年続く」という意味。
確かに、聖武天皇の時代から天平文化が花開いて長く続きましたね^^
天皇は奉幣使を立てて感謝を伝え、この時に元号を「天平」に変えたそうです。
松尾大社の御朱印
松尾大社はその他にも、お酒の資料館(無料)や、宝物館(有料)、現代庭園学の泰斗、重森三玲氏による三つの庭園(有料)を見学することができます。
宝物館と庭園はセットで500円です。
私も見学したのですが、その一つの「蓬莱の庭」は社務所裏ではなく、楼門を出た所の茶店の裏側にあったようで、見逃してしまいました^^;
庭園見学をされる方は、忘れずに見学して下さいね^^