京都・嵯峨野にある
読み方は「のみや」ではなく「ののみや」です。
縁結び・恋愛成就のご利益が有名な神社で、源氏物語の「賢木の巻」にも登場するほど歴史ある神社です。
京都で嵯峨・嵐山と言えば「竹林」をイメージする方は多いと思います。
嵯峨野にある竹林の道は、撮影でよく使われるのですが、野宮神社はそんな竹林の道のスタート地点にあります。
なので、平日でもたくさんの人でにぎわっています。
嵐山観光と合わせて、縁結びの御利益を求めて野宮神社にも足を運ぶ人が多いのですが、実は他にもたくさんのご利益があります。
今回は、野宮神社の歴史、見どころ、そして頂けるご利益を紹介します。
【野宮神社の歴史】野宮神社は平安時代からパワースポットだった
野宮神社がどういう場所なのか?ということを知るキーワードが斎宮制度です。
その昔、新天皇が即位すると、天皇の代理として伊勢神宮に奉仕する「斎王」を、未婚の皇女の中から任命していました。
それを斎宮制度といいます。
野宮神社の地は、元々「斎王」が潔斎(身を清める)するのに使われた場所でした。
斎王に選ばれた皇女は、伊勢で奉仕につく前に、皇居内で1年余り潔斎します。
潔斎が終わると、浄野(汚れのない地)に仮の宮(野宮)を建ててそこに移り、更に3年間潔斎の後、伊勢神宮に向かうことになっていたんです。
斎王は、天皇が変わると新たに任命されます。
野宮の地もその度に変わりますが、斎王が潔斎する地は嵯峨野の地とされているのが定番でした。
なので平安時代には嵯峨野一帯に野宮が設けられたのですが、その中で神社として後世に残ったのがこの野宮神社なのです。
野宮神社の場所を使うようになったのは平安時代初期、嵯峨天皇の皇女が最初とされています。
つまり、その頃からパワースポットと認識されていたわけですね^^
斎宮制度は、飛鳥時代から室町時代に南北朝の動乱があるまでおよそ660年間続きました。
ちなみに、賀茂社(上賀茂・下鴨神社)にも斎王がいましたが、神宮と賀茂社の斎王を別けるために、神宮の方は"斎宮"、賀茂社の方は"斎院"と呼ばれています。
野宮神社にはこのような由来があるので、毎年10月の第3日曜日に「斎宮行列」が行われます。
京都の秋の風物詩の一つとなっているイベントで、斎王が伊勢へ向かう旅「斎王群行」を再現したものです。
綺麗な着物を着た斎宮代(今は斎宮はいないので、斎宮の代理)と、伴のものが100人くらい嵐山を練り歩きます。
その様子まさに、古代のファッションショーさながら。
嵯峨・嵐山地域の葵祭みたいなものですね^^
詳しくは野宮神社の公式サイトをご覧ください。
野宮神社が登場する源氏物語のあらすじ
仮の宮「野宮」は、源氏物語の第10帖「
光源氏の愛人である六条御息所を訪ねるシーンです。
その前に、第9帖 葵巻で前置きとなる話があるので、第9帖から第10帖で光源氏が野宮神社に訪れるまでのあらすじを紹介します。
ここでの光源氏以外の登場人物は、
葵上 :光源氏の正妻六条御息所 :光源氏の愛人。前の皇太子の妃- 六条御息所の娘:次回の伊勢の斎宮に内定していた
です。
六条御息所は、光源氏よりも7歳年上で、光源氏の兄(皇太子)と結婚し、次期皇后の立場にありました。
父は大臣で幼いころから皇后になるための教育を受けてきたので、身分はもちろん、教養深く、美しさや気品もある女性です。
しかし夫が皇太子のまま亡くなってしまい、その後、光源氏と愛人関係になります。
光源氏への思いは高まっていくのですが、完璧でプライドの高い性格が邪魔して素直になれず、光源氏の方も持て余すようになり、だんだんと気持ちが遠のいてしまうのです。
このようなところから六条御息所は、光源氏をとりまく女性に嫉妬するようになり、やがてそれが生霊になって、女性たちを襲うようになります。
そして、賀茂祭(葵祭)で事件が起こります。
光源氏の妻、葵上は妊娠中で気分がすぐれなかったのですが、周囲の勧めで牛車で葵祭の見学に来ていました。
見物客が多すぎて牛車を停めるのに苦労する中、同じく牛車を停めるところを探していたのが、六条御息所を乗せた牛車です。
そこで鉢合わせてしまいます。
双方の従者は車を停める場所をめぐって争いになり、六条御息所の牛車が破損してしまいます。
大衆の面前で屈辱を受けた六条御息所はますます恨みを募らせ、無意識のうちに生霊を生み出してしまい、葵上に憑りついて殺してしまうのです。
光源氏もその様子を見てしまったので、六条御息所に対してますます冷めった気持ちになっていくのでした。
六条御息所も無意識に生霊を生み出したとはいえ、それを止める力がなかった自分に罪悪感をおぼえていたので、光源氏との恋愛に決別するため、斎宮として伊勢に行くことが決まっていた自分の娘についていくことに決めていました。
一方で光源氏は、六条御息所のことを不憫に思い、野宮へと向かいます。
六条御息所は、光源氏への未練を断ち切るために、光源氏との面会は断って伊勢に向かおうとしていたのですが、側仕えの者から説得されて二人は直接語り合います。
ここで光源氏は、伊勢に向かうのを止めるよう伝えるのですが、既に決定したことを取り下げることはできず、六条御息所は伊勢に下っていくのでした。
【野宮神社の見どころ】源氏物語に描かれた日本最古の鳥居「黒木鳥居」と「小柴垣」
野宮神社の入り口にある「黒木鳥居」は、光源氏が六条御息所を訪ねて野宮に訪れる場面で描写されています。
普通、鳥居といえば朱色に塗られていますよね。
でも野宮神社の鳥居は、クヌギの樹皮を剥がず、木の質感をそのままに丸太のまま組んでいます。
平安時代当時の様子を残したい、という思いから古来の様式をそのまま使っているのだそうです。
源氏物語には、このように描かれています。
ものはかなげなる小柴垣を大垣にて、板屋どもあたりあたりいと かりそめなり。
黒木の鳥居ども、さすがに神々しう見わたされて、わづらはしきけしきなるに、神司の者ども、ここかしこにうちしはぶきて、おのがどち、物うち言ひたるけはひなども、他にはさま変はりて見ゆ。ちょっとした小柴垣を外囲いにして、板屋が幾棟もあちこちに仮普請のようである。
黒木の鳥居どもは、やはり神々しく眺められて、遠慮される気がするが、神官どもが、あちこちで咳払いをして、お互いに、何か話している様子なども、他所とは様子が変わって見える。
斎宮が身を清める場所である野宮は、今のように固定された場所にある神社ではなく、仮の宮として神聖な場所に期間限定で建てる宮です。
だから、間に合わせのような即席の建物が建っているんですね。
光源氏はそれでも鳥居には神聖さを感じているように描かれています。
当時、実際の野宮という場所が、それだけ特別な場所だったんですね。
そしてそういうひっそりとした場所で思い悩みながら日々を過ごしている六条御息所を不憫に思っていたのです。
その光景が少しでも感じ取れるものが、竹林を抜けて自然に囲まれた中に建つ黒木鳥居です。
今でこそ観光客でごった返す場所ですが、朝早く参拝すれば人もまばらなので、その風情を感じることができるかもしれません。
縁結びだけじゃない!野宮神社で頂けるご利益と、おススメ参拝方法
野宮神社は縁結びで有名ですが、子宝や学問、商売繁盛など、多彩な神社となっています^^
さらには撫でると願い事が成就するというパワースポットも!
順に紹介しますが、まずは野宮神社で推奨される参拝方法です。
- ご本殿の野宮大神に日頃の感謝を伝える(二拝二拍手一拝)
- 頂きたいご利益を持つ神様を参拝
- 最後に祈りを込めて神石(お亀石)を撫でる
ざっと、こんな感じです^^
1.野宮大神に日頃の感謝を伝える
まずは、境内に入って左側にある手水舎で手水をすませたら、正面のご本殿にいらっしゃる神社のボス、野宮大神にご挨拶。
ここでは個人的なお願いではなく、日頃の感謝を伝えましょう^^
野宮大神は、伊勢神宮に祀られている神様と同じ、天照皇大神のことです。
伊勢神宮の本殿では「個人的なお願いをせず日頃の感謝を伝える」ようにします。
野宮大神も同じ神様ですから、同じようにします。
日頃の感謝を伝えたら、他の神様にご利益を頂きに行きましょう。
2.野宮神社境内のご利益巡り
ご挨拶が済んだら、お次はお目当てのご利益巡りです^^
好きなところから参拝してOKです。
神様を紹介すると、まず一番近いのは、本殿左側にいらっしゃる白峰弁財天さん。
財運・芸能上達のご利益があります。
何か芸術的な事をされている方、ダンスや音楽をしている方などはこちらにお参りされると良いですね^^
境内左側、白峯弁財天さんの前には、一番お目当ての方が多い野宮大黒天さん。
神石の右隣の祠です。
こちらは良縁結婚、進学の神様です。
縁結びを願う方はここでお参りしましょう。
野宮大黒天の左側にある神石(亀石)は、祈りを込めて撫でると願いが叶うそうです。
霊験あらたかな石で、願いは1年以内に叶うともいわれています!
まさにパワースポットですね!
ただしこの石は、神様に祈願した後。
仕上げに撫でるものなので、まだとっておきましょう。
ちなみに、野宮大黒天の後ろにかけられている絵馬は、縁結びらしい絵馬になっています。
こちらは社務所で購入することができます。
そして実は、野宮大黒天は縁結びだけでなく縁切りもできるんです^^;
それがこちら。
浮かんでいるのは、「禊祓清浄御祈願」という紙。
授与所で300円で販売されています。
ここに、迷惑行為など祓いたい、清めたいことを書いて、水面にコインを乗せて浮かべます。
文字が消えて紙が沈んだら、お祓いの願いが叶います。
「縁切り」というと不気味なイメージがありますが、人の縁でも「良縁」を切るのではなく、「悪縁」を切るのです。
さらに、人の縁だけでなく、自分の悪い癖なども「縁」と考えてOK。
そんな悪い縁は切ってしまいましょう。
考えてみれば、斎王が身を清めるために使った場所ですから、そういう悪縁切りが出来るのも納得できますね^^
良縁を結びたい方も、先に悪縁を断ち切ると、良縁がより確かなものになると思います。
本殿右には、火伏せの神で有名な愛宕大神がいらっしゃいます。
こちらでは、健康・ちえさずけのご利益があるようです。
本殿から右側に行くと、境内社の白峰稲荷の鳥居があります。
その奥に行くと、子宝安産、商売繁盛の白福稲荷大明神がいらっしゃいます。
お隣には、交通安全、財運向上の大山弁財天さんもいらっしゃいます。
3.亀石に念を込める
最後に先ほども紹介したこの亀石。
祈りを込めて撫でましょう♪
野宮神社はご利益尽くしの神社ですね。
嵐山・嵯峨野に来たら、ぜひ参拝しておきましょう♪
野宮神社の御朱印
野宮神社の御朱印です。
印だけのシンプルなものになっています。