高月観音堂

滋賀県湖北地方にあるの観音の里、高月町。
奈良や京都の仏像に見劣りしないレベルの高い観音像が町中に安置されている町です。

その町の名前をとった「高月観音」と呼ばれる観音様が、北陸本線「高月」駅から徒歩5分ほどの「大円寺」というお寺にいらっしゃいます。
大円寺は通称「高月観音堂」と呼ばれていて、名前はこちらの方が有名ですね。

その高月観音堂に祀られている観音様は、木造の十一面千手観音。
戦国時代には兵火を逃れ、岩上に立っていたという逸話が残っていて、「火除けの観音さま」として信仰されています。

こちらが本堂の観音堂。
そんなに大きなお堂ではありません。

高月観音堂

このお寺は無住なので普段は閉まっていて、拝観するには電話で拝観予約が必要です。
私が参拝したのは「観音の里たかつき ふるさとまつり」の日だったので、すでにお堂が開けられていました。
中にはもう参拝者がたくさん!

高月観音堂 参拝者

お堂内にはご本尊の千手観音の他にも脇侍として納められた不動明王と地蔵菩薩、天部の神様である毘沙門天や弁財天、絵が残った立派な厨子に安置されている阿弥陀如来、昔村内に建てられた栗原坊のご本尊として伝わっている薬師三尊などの仏像、そして珍しいことに白髭明神の神像がありました。

高月観音堂 不動明王

高月観音堂 毘沙門天

高月観音堂 弁財天

高月観音堂 厨子入り阿弥陀如来

高月観音堂 薬師如来

高月観音堂 白髭明神

これらの仏像は、かつて集落の各所にある祠などに祀られていた像を集めたものなのだとか。

古い絵馬もたくさんかけられています。

高月観音堂 絵馬

観音堂を守っている集落の方々も、お堂内で仏像や絵馬の説明をして下さったり、御朱印の対応をして下さっています。

高月観音堂

ありがたいことに、お堂の外では参拝者にお茶やお菓子を無料で配ってくれたりもするんです♪

そして、こちらがご本尊。

高月観音

高月観音

高月観音

伝教大師 最澄作と伝えられていますが、作風や表現の仕方から室町時代作とも言われています。

ご本尊はよく見ると木肌が見えているのですが、御本尊は金箔の貼られた厨子に入っていますので、ご本尊も輝いて見えますね^^

かつてこの辺りは、平安時代に最澄が観音像を次々に作って以来、村も寺も賑やかで、お寺は七堂伽藍が揃っていました。
それが戦国時代に入り、幾度も戦乱に巻き込まれて荒れ果ててしまいました。
そして、豊臣秀吉と柴田勝家が戦った静ヶ岳の合戦の折、この観音堂も焼失してしまったんです。

でも観音様だけは自ら火難を逃れ、東の方の少し離れた石の上に美しく輝きながら立っていたそうです。
そして村中を火難から守ったのだそうです。

この話は逸話なのでしょうけれども、この角度から見上げるとそのようにして守ったのだろうと想像できますね^^

高月観音

このご本尊、立派なので国の重要文化財にでも指定されているのかと思いきや、そういう指定はされていないのだとか。
ただ、町が指定する、いわゆる「市指定文化財」となっているようです。

重文クラスはありそうな美仏なのになぜ指定されないのか?
それは明治時代に、村人が独自で手入れをしたことにあるのだそうです。

何でも、今のようにきれいになる前、この像は黒ずんでいたのだそうです。
それをきれいにしようと思って、今のように木肌が見えるようになったのだとか。

文化財というのは、修理するにしても決まったやり方があるので、そのやり方から逸脱すると国の指定は受けられません。
きれいにするといっても、あえて残しておかなければならない部分もあるわけです。
せっかくの美仏なのに惜しいですね^^;

次は絵馬です。
高月観音堂に訪れたら、絵馬もチェックして下さい。
いくつか紹介しますと、まずは黒い馬の絵馬。

高月観音堂 黒馬

これは、雨乞いのために奉納された絵馬です。
天候を願う絵馬には「白馬」と「黒馬」の2パターンがありますが、晴れを願いたい場合は白馬を、雨を願いたい場合は黒馬を掲げるんです。
なのでこの地域は水不足に悩んでいたのだろうと想像できます。

お次は大円寺参詣図。

大円寺参詣図

江戸時代に奉納された宮曼荼羅です。
宮曼荼羅は大きな神社仏閣にはよくあるのですが、このように小さなところにあるのは珍しいですね。
それだけ信仰されてきたお寺なのだと思います。

お次は大名行列図。

高月観音堂 大名行列図

こちらは江戸時代の参勤交代の様子ですが、この大名行列は九州の島津藩(薩摩藩)の行列です。
なぜここに島津藩の行列図があるのか?というと、戦国時代以降、この辺りに島津藩出身の人がここにたくさん土着していて、今でも島津姓の人が多いのだとか。

この絵は逢坂峠を抜けて勢多の唐橋を渡るところを描いているようですが、近くを通った島津藩の様子を描き、祖先供養のために奉納したと考えられています。

今では絵馬はお手軽に奉納しますが、昔は大変な祈りを込めて奉納しているものだったんです。
色々とストーリーがあってそこに掛けられているので、世話方にお話を伺うと面白いですね^^

ちなみに、お堂の外には、ひっそりと庫裏が建っています。

高月観音堂 庫裏

ここは閉まっていて人の気配もないのですが、中には大般若経が数百巻納められていて、現在は高月観音の里 歴史民俗資料館にある釈迦苦行像もここに納められていたそうです。

大円寺 釈迦苦行像

こういう像が日本に存在するのは珍しいですね。

御朱印

高月観音堂のご本尊、十一面千手観音の御朱印です。

大円寺 高月観音堂 御朱印

あらかじめ用意された、貼り付けタイプの御朱印で、200円でした。


高月観音堂は、駅からすぐ歩いて行ける便利な場所にあります。
高月観音堂から10分ほど歩いた場所に、国宝の十一面観音を安置する向源寺がありますし、その近くには高月観音の里 歴史民俗資料館もあります。

湖北の仏像を巡るにあたって行きやすいお寺だと思います。