和歌山市内から和歌浦湾を一望できる、標高230mほどの小高い名草山。
その中腹に、西国三十三所 第二番札所の紀三井寺があります。
正式名称は「紀三井山 金剛宝寺護国院」というのですが、「紀三井寺」という別名の方が有名です。
古くから熊野詣の中継地点にあって栄え、江戸時代になると紀州徳川家のお城でもある和歌山城が近く、歴代藩主が繁栄を祈願するお寺となりました。
また、近畿地方で一番に咲く早咲き桜の名所で、ここの桜の状況を見て、近畿地方の開花宣言が出されます。
そんな紀三井寺を参拝しました。
紀三井寺を建立した唐の高僧「為光上人」
紀三井寺は宝亀元年(770)、唐から渡来した「為光上人」が建立したお寺です。
為光上人は学があり、修行も積んだ高層で、日本に観音信仰を広めようとして諸国を行脚していました。
そしてたまたまこの地を訪れた時、山の頂上付近で白く光っているものが見えたのです。
不思議に思って上がってみると、金色に輝く千手観音がおられたのです。
この地が仏と縁の深い地だと悟った上人は、自ら一刀三礼(一彫りするごとに三回礼杯する)で十一面観音を彫り、草庵を建てて安置しました。
それが紀三井寺の始まりです。
紀三井寺へのアクセス・駐車場
紀三井寺は、寺営の駐車場(3時間300円)があると聞いていました。
場所はこちら。
ここにいくには、車1台通るくらいの狭い道を行かなければいけません。
そして3時間300円という時間制限付きです。
ただ、周りの道が細くて、すれ違いが心配だったんですよね^^;
なので私が停めたのは、紀三井寺の楼門のほど近くにある「紀三井寺 はやし駐車場」という有人の駐車場。
1日500円でした。
場所はこちら。
私が調べた限り、紀三井寺付近には3つ駐車場があります。
- 寺営駐車場
- 紀三井寺 はやし駐車場(有人駐車場)
- キナンパーク 紀三井寺(コインパーキング)
どこに停めた方が得かは、人によると思います。
「紀三井寺 はやし駐車場」は熊野街道から県道154号線に入って、踏切の手前にあります。
寺営駐車場より200円高いですが、1日停められますし、停められる台数も多いです。
そして楼門に近くて、駐車場までの道も普通に広いです。
狭い道の運転が苦手なら、こちらの方が良いかもしれません^^
さらにお土産屋さん、喫茶、レストラン、ガーデンホテルなどをこのあたり一帯で経営していて、そこで2,000円以上の利用があれば全額返金になります。
もう一つの「キナンパーク 紀三井寺」は、はやし駐車場から踏切を越えたところ。
私が訪れた時は、平日30分100円、土日祝30分200円、24時間最大1,000円でした。
どちらがお得かは日にちや滞在時間によりますね。
ちなみに紀三井寺はそんなに広くありませんので、普通にゆっくりしても3時間あれば十分だと思います。
2016年4月時点の情報ですが、初めて行かれる方は、参考にしてみてください。
熊野街道から入る参道
紀三井寺の近くには、京から大阪を経て熊野三山に続く「熊野街道」が南北に通っています。
紀三井寺は熊野街道から東に向かって参道が伸びています。
このあたりはかつて、熊野の勢力下にあった場所。
紀三井寺は古くから熊野詣の中継寺院となっていたんです。
平安時代には法皇、上皇クラスの方々の間で熊野詣が流行ったので、そのようなえらい方々が立ち寄ったことでしょう。
西国三十三所観音霊場の中興の祖といわれている花山法皇は、こんな御詠歌を残しています。
「ふるさとを はるばるここに 紀三井寺 花の都も 近くなるらん」
これは、法皇が那智の方にある一番札所 青岸渡寺から紀三井寺に向かっていたのですが、その道のりは札所最大の長さで、しかも険しい山々を越えねばなりません。
やっとの思いで紀三井寺にたどり着くと、まだ遠いはずの京の都が近くに感じられる、という意味です。
実際、那智から紀三井寺までは車でもかなり遠いですので、紀三井寺が見えた時はさぞ嬉しかったでしょうね^^
入り口には三間一戸の入母屋造の楼門(重文)が建っています。
両サイドには金剛力士が目を見開いて立っていました。
商売の縁、人の縁を結ぶ「結縁坂」
門をくぐると、いきなり231段の急な石段が現れます。
見るだけでひるんでしまいそうなこの石段は結縁坂といわれています。
かつては坂だったようです。
この結縁坂には紀州が産んだ江戸中期の豪商、紀ノ国屋文左衛門にまつわるエピソードがあります。
有田のみかんを江戸に運ぶみかん船と、良質な紀州の材木を販売する材木問屋として荒稼ぎしたベンチャー企業家です。
若い頃の紀ノ国屋文左衛門は、貧しくとも親孝行な青年でした。
ある日、母を背負ってこの階段を登り、観音様へお参りをしていると、草履の鼻緒が切れてしまいました。
文左衛門が困っていると、和歌浦湾、紀三井寺の真向かいにある玉津島神社の宮司の娘「かよ」が通りかかり、鼻緒をすげ替えてくれたのです。
これがきっかけとなって文左衛門とかよに恋が芽生え、結ばれました。
後に文左衛門は、江戸へ出荷するみかん船の出資金を宮司に出してもらって大儲けし、さらに材木問屋も営むようになって、一大で富を築きました。
急坂なので大変ですが、大切な人と一緒に登ると成就するのだとか。
そして、人の縁だけでなく、商売の縁にも恵まれるようですね^^
桜の季節はデートに紀三井寺へ、というのも良さそうです。
階段は層になっていて、所々に塔頭寺院があります。
身代わり大師や、お不動さんの勝守、ペットお守りなど、御利益別に色々分かれていました^^
そして途中から層に分かれて25段、33段(女厄除坂)、42段(男厄除坂)、61段(還暦厄坂)とあり、厄年を踏み越える石段になっています。
一気に登ろうとするとなかなか大変ですが、層ごとに登りきったところで一息つけるので、休みながら登ればそんなに大したことはありません^^
でも、この全231段の急な石段を、元陸上100m日本記録保持者・青戸慎司選手が21.9秒で登ったのだとか!
さすが陸上選手ですね^^;
紀三井寺の名前の元になった三泉
紀三井寺の正式名称は「金剛宝寺護国院」、この山も「名草山」というのですが、「紀三井寺」として知られています。
紀三井寺は通称名なんですね^^
また、山号もそのまま「名草山」とすれば良いと思うのですが、こちらも「紀三井山」となっています。
この名前は、名草山に湧く3つの霊泉からきています。
「清浄水」、「吉祥水」、「楊柳水」の3つで、3つ合わせて「三井水」と呼ばれています。
この三井水は、「紀伊国名迹志」や「紀伊国名所図絵」、「紀伊続風土記」などにも記述がみられるほどで、三清泉とされています。
それだけ昔は重宝されていた水だったのでしょう。
滋賀県大津市にも園城寺というお寺があって、そちらも通称「三井寺」という名前で知られています。
由来は違いますが、それと区別して紀州の「紀三井寺」と呼ばれているんです。
そして結縁坂を登っている途中に現れるのが、三井水の一つ「
上から滝のように水が落ち、下に不動明王が祀られています。
この三井水、境内を歩いていたら出会うだろうと思っていたのですが、こちらしか見つかりませんでした^^;
景色を見たり、仏像を見たり、色々していたら、そのまま忘れてしまったんです><
あとでリーフレットを見ると、配置はこのようになっていました。
清浄水は3つのうち真ん中にあります。
そして、そこから結縁坂をもう少し登って、右に行くと、楊柳水があるようです。
残る吉祥水は、境内の外。
紀三井寺の駐車場からさらに北に、民家の間の道を行き、右手にある民家の裏にあります。
このあたりです。
Googleのストリートビューで見ると、入り口に小さな祠があって、電柱に「吉祥水入口」と書かれた紙が張られていました。
行かれる方は、あらかじめ場所を確認しておいてください。
境内の外ということもあるので、お参りを済ませたらすっかり忘れてしまいますね^^;
私もまたいつか、秘仏本尊の御開帳か、桜の季節あたりにリベンジしようと思っています。
小高い山に堂宇が密集した境内
紀三井寺は、小高い山の上にあるので、境内はそんなに広くありません。
参拝するだけならそんなに時間はかからないでしょう。
結縁坂を登ると、まず目の前にあるお堂は六角堂。
ここには各西国三十三所の御本尊が祀られていて、ここをお参りすれば三十三所を巡礼したのと同じ功徳があるのだそうです。
いわゆる「うつし霊場」ですね。
西国三十三所は、近畿各地の北の端から南の端まで、そして岐阜県にまたがる広い範囲で巡礼する必要があります。
道路が整備されている今でも全て周るのは大変ですが、昔はなおさらです。
巡礼できる人は限られた人だったのではないでしょうか?
そういう人のためにも、江戸時代の寛延四年(1751)に建立されたお堂です。
その左隣には開山堂と鐘楼が続き、少し先には本堂が見えます。
参道の両端には桜の木が植えられています。
私は4月中旬と桜が終わった頃に訪れていますので、既にこのような緑が生い茂った状態になっていますが、桜が満開になった状態を想像するとさぞキレイでしょうね^^
山の方を見上げると多宝塔。
緑に囲まれて、下からはほとんど見えません。
多宝塔は本堂より高い位置にあって、またまたちょっと急な階段になっているのですが、登ってみると、鮮やかな朱色の多宝塔が見えました。
どこから見ても緑に囲まれているので、写真に収めるには非常に難しい多宝塔です^^;
そしてこちらが本堂。
ただし、開基の為光上人作と伝わる二体の御本尊、十一面観世音菩薩立像(重文)と、為光上人が見つけたとされる千手観世音菩薩立像(重文)は、なんと50年に1度御開帳の秘仏!
現存するのはありがたいのですが、なかなか拝観できる機会はありません。
次回の御開帳は2020年の予定だとか。
東京オリンピックイヤーですね!
また、時々中開帳もあるかもしれませんので、そういう機会も見逃せません。
この二体は、本堂奥にある収蔵庫、耐震・防火対策もバッチリな「大光明殿」で大切に安置されているのだそうです。
私は本堂内陣の特別拝観で入れたのですが、内陣には室町時代の千手観世音菩薩や、阿弥陀如来、薬師如来、そして増長天・持国天像などの四天王がいらっしゃいました。
西国三十三観音が祀られる霊宝堂
本堂の納経所横に、ふと目にしたのが「霊宝堂」と書かれた扉。
公式サイトにはこういうものがあるとは書かれた記述は見当たらなかったのですが、拝観料は100円。
紀三井寺は入山料や内陣拝観も200円と安いのですが、こちらも安いですね。
誰も入る様子はないのですが、納経所で受付を済ませ、入ってみました。
固くて開きにくい扉を開けると、いきなり地下に続く階段!
地下一階には、西国三十三箇所の霊験が書かれた絵図が展示してありました。
さらには、地下二階も。
行っていいの?という感じの雰囲気でしたが、行ってみることに・・・
そしたら、地下一階のような展示エリアとは打って変わって、胎内めぐりのような薄暗い礼拝の場になっていました。
灯りが灯っているところは、西国三十三所の観音様の御影が祀られています。
一ヶ所一ヶ所にさい銭箱が用意されていて、巡礼できるようになっていました。
こちらは、先ほど紹介した六角堂と同じ「うつし霊場」でしょうね。
ただ、六角堂とは違って、一ヶ所一ヶ所に祈りをささげるので、うつし霊場の丁寧バージョンですね^^
壁一面に埋め尽くされているのは、本堂前(写真撮り忘れました^^;)にあった祈願杓子。
本堂前で杓子に願い事を書き、奉納するのですが、奉納された後は法要などをするのかもしれませんが、こちらに移されるようですね。
何も知らずに入ったので一見不気味でしたが、理由を考えれば、願い事を観音様に届けているということですね^^
木造立像で日本で一番大きな観音様を祀る仏殿
境内から麓側を望むと、遠くに和歌浦湾を望むことができます。
でも、こちらも木が高くて見えにくいですね^^;
ただ、紀三井寺には平成19年に完成した、3階建て展望回廊付きの大きな仏殿があります!
景色を眺めるならそこからの眺めが最高です^^
それが、結縁坂を登ってすぐ右手にあるこの建物。
熊野街道沿いを走っていても見える伽藍は、仏殿でした^^
3階建ての大きな建物ですが、この中には木造立像では日本一の大きな観音様がいらっしゃいます。
木造千手十一面観世音菩薩、総漆金箔張仕上げという豪華な仏様。
平成の大仏師、松本明慶さんが手掛けた、像高12mの仏様です。
2階は納骨檀になっていて入れませんが、3階の展望回廊まで登ることができます(100円)。
登ってみるとこの景色!
まずは和歌山マリーナシティー方面。
そして紀三井寺の参道と、夕日に輝く和歌浦湾。
下で見た景色とは大違いです^^
和歌山城方面。
画質が落ちますが、ちょっとアップにしました。
本堂も見下ろすことができます。
多宝塔は全く見えません。
冬なら伽藍が見やすいでしょうね。
紀三井寺の御朱印
西国三十三ヵ所の御朱印です。
御詠歌の御朱印です。
西国三十三所観音霊場は、2016年で草創1300年を迎えます。
2016年から5年間、特別拝観などのイベントが各札所で行われるのですが、それと同時に作られているのが、「スイーツ巡礼」です^^
各札所に限定のスイーツが用意されていて、紀三井寺では、「紀三井寺三井水功徳玉子煎餅」(3枚200円)と、和歌山マリーナシティホテルの「花蜜ロール」(1,100円)が指定されています。
玉子煎餅は本堂の納経所で販売されていますが、花蜜ロールは特に出店があるわけではなく、和歌山マリーナシティホテルのカフェ&ベーカリー「カテリーナ」で販売しているようです。
境内や門前町で出店しているのならわかりますが、和歌山マリーナシティホテルはちょっと場所が離れています。
紀三井寺ゆかりでもなさそうなので、それはスイーツ巡礼ではないのではないか?と個人的には思うのですが、単純に美味しそうですよね~(≧▽≦)
私は購入しようとして、境内を探してしまいました。
購入しようと思っている方はお気をつけください。