奈良にある藤原氏の氏寺、興福寺では2016年8月26日~10月10日まで国宝の五重塔と三重塔、2つの塔の初層を特別公開しています。
五重塔や三重塔などは「仏塔」と言いますが、これは釈迦の舎利(遺骨)を納めたお墓です。
仏教では、塔を建てることが仏法を大切に守るということに繋がり、大きな功徳が得られるとされているんです。
藤原氏ほどの権力も財力もあれば、そういう塔を建てたくもなりますよね^^
こちらがリーフレット。
五重塔は通常非公開で、特別公開は滅多にありません。
今回は6年ぶりの公開なのです。
三重塔の方は、7月7日弁財天供の時に御開帳されています。
年に一度だけです。
なので御開帳はどちらか一つでも貴重なのですが、今回は二つ揃っての御開帳!
これは初の試みなのだそうです。
早速拝観しに行きました。
VR体験ができる三重塔へ
特別拝観券(大人1,000円)を購入して、まずは五重塔から・・・と思ったのですが、販売所の横にこのような看板が。
三重塔西側で、今年話題のVRを使って三重塔の往時の極彩色空間を体感できるイベントがあるそうです。
特別拝観券を持っていれば体感することができるのですが、13歳未満は不可、1日先着250名とのこと。
人数制限があるので、こちらから行ってみることにしました。
こちらが国宝の三重塔。
南円堂の裏手にある、ものすごく優美な塔です。
横からの姿も良いのですが、下から見上げてもきれいです。
三重塔は康治2年(1143年)、藤原忠通の長女で崇徳天皇の后妃となった皇嘉門院聖子(藤原聖子)が建立しますが、治承4年(1180年)に平氏による南都焼き打ちで焼失、間もなく再建されました。
興福寺の伽藍の中では、北円堂と並んで最古の建物となっています。
普段は中に入れないこともあって、いつもこのあたりはひっそりとしているんですよね^^;
でも今回は拝観できるということもあり、塔の正面には受付のテントが張られていました。
三重塔の中は初層は方三間で4.8m。
その中は、中央に方柱があり、四天柱(塔の周囲にある4本の柱)と方柱の間は板で仕切られています。
このように仕切られた部屋が東西南北に四つある形をとっています。
一般に、仏塔は人が中に入ることを考えて設計されていません。
この三重塔も同じで、入ったとしてもものすごく狭くなっているので、今回の御開帳では、初層を外側の回廊をぐるりと回りながら拝観するというスタイルになっていました。
初層内部には、板壁に千体仏が描かれ、東側の須弥壇には弁財天坐像と、その眷属の十五童子像が安置されています。
板壁の千体仏が描かれるのは興福寺の三重塔独特のものなのだそうで、東方に薬師如来、南方に釈迦如来、西方に阿弥陀如来、北方に弥勒如来、それぞれが千体仏で、計四千体となっています。
といっても、実際には傷みが激しく彩色の多くが失われているので、ちょっとわかりにくいです^^;
三重塔の出口に千体仏などのパネルが展示されていました。
こんな感じの残り具合で、色彩はほとんど失われています。
四天柱や長押、外陣の柱や扉には宝相華文や楼閣、仏や菩薩など浄土の景色が描かれているというのですが、それもちょっとわかりにくくなっています。
こちらもパネル展示です。
わかりやすくしたパネルでこれですから、実物はもっとわかりにくいです。
なので一番の見どころは、東側にある弁財天ですね。
撮影は禁止なので、リーフレットよりお借りしました。
この弁財天は、明治の廃仏毀釈後に祀られるようになった仏さま。
興福寺の子院で桃山時代初期に建てられた旧世尊院伝来のもので、江戸時代初期の作です。
像高38.5cmの像で、頭に宇賀神を乗せています。
なかなか立派でしたし、十五童子像も表現が豊かだったのでゆっくり見たかったのですが、回廊が狭くて立ち止まると後ろがつかえてしまうので、なかなかゆっくりはできませんでした^^;
興福寺の弁財天は、弘法大師 空海が奈良の天川より勧請したものだったという伝承が残っています。
興福寺が南円堂を建立している時、空海はその無事の完成を祈って天川弁財天に参籠したといいます。
その時に宇賀弁才天を感得したので、興福寺に勧請したのだそうです。
この弁財天も宇賀弁財天なので、これが空海が感得した弁財天のお姿なのかもしれませんね。
そして三重塔の西側の奥には、往時の塔内の様子をVRで体験できるコーナーになっています。
「冷やしVR」なる幟が立っているのですが、何が冷やしなのかはよくわかりません(≧▽≦)
でもここに座って6人ずつくらい、3~4分ほどのVR映像が楽しめるようです。
私は平日の10時半くらいに訪れたのですが、その時で約15分待ち。
(私が出る頃には40分待ちになっていました。)
いよいよ私の番となって、席にはヘッドホンとヘッドマウントディスプレイが置かれていました。
これを身に着けるとVRコンテンツが楽しめるわけです。
ナレーションが始まって、映像は三重塔の外から始まるのですが、映像が塔内に入っていく時、私も背中を押されて入っていくような感覚になりました!
ものすごい臨場感です^^
これで塔内の極彩色を施された様子を見学するのですが、上を向いたり、後ろを振り向いたりすると、まるで塔内にいるかのように360度見渡すことができます。
傷んでよく見ることができなかった千体仏も、これならまじまじと見ることができます。
そして浄土の景色が彩られた塔内を見ていると、いかに浄土への想いを込めて建てられたのか、感じられるような気がしますね^^
興福寺の五重塔&三重塔特別拝観は2016年8月26日~10月10日までとなっていますが、このVR体験は9月は休みとなっています。
どうしても体験したい方は10月に訪れましょう。
興福寺のシンボル、五重塔内へ
お次は興福寺のシンボル、五重塔です。
木造の仏塔では、東寺に次いで日本で二番目に高い塔となっています。
創建は天平2年(730年)、興福寺の創建者である藤原不比等の娘、光明皇后です。
現在の塔は応永33年(1426年)、室町時代の再建ですが、古式に倣って奈良時代の特徴も随所に残している塔です。
三重塔は塔内に入ることはできませんでしたが、五重塔はなんと入ることができます!
これだけ大きいとやっぱり入れちゃうんですね^^
五重塔の扉が開いていて、係の人が誘導しています。
五重塔は柵で囲まれていて普段は近づけないようになっているので、真下から軒を見上げるのも貴重な機会です^^
これは古代の建築の特徴なのだとか。
中は撮影禁止なのでまた解説になってしまうのですが、初層の内陣には仏さまが曼荼羅風に祀られています。
いわゆる四方仏です。
- 薬師浄土変(東):薬師三尊像
- 阿弥陀浄土変(西):阿弥陀三尊像
- 釈迦浄土変(南):釈迦三尊像
- 弥勒浄土変(北):弥勒三尊像
それぞれの仏が自分の担当する浄土の方向を向いているんですね。
またまたリーフレットからお借りすると、このような感じで四方にそれぞれの浄土の主となる仏が祀られています。
どれも同じように見える仏さまですが、この四方仏のお顔をじっくり眺めていると、それぞれ特徴的なんですよね。
私が一番凛々しいなあと感じたのは、薬師如来。
あごのラインがシャープで、目がキリっとした感じ。
お薬師さんはゆったりとしたものが多いイメージですから珍しいですね^^
となりの日光・月光菩薩も背筋がピシっと伸びて、しっかり仕事してます風でした^^
また、釈迦の眷属である普賢菩薩と文殊菩薩だけは、蓮華座の下に六牙の白象と獅子の上に蓮華座を置いていました。
その白象と獅子もなかなか見事!
いずれも間近で見ることができました^^
また、北方の弥勒三尊の下に、板が外されている部分があって、そこから心柱が礎石の上に乗っている様子を確認することができました。
仏さまの後ろの方では板に囲まれて方形になっているのですが、礎石付近は円柱の心柱が丸出しになっていました。
心柱そのものを見る機会もなかなかないのですが、心柱も礎石もかなり大きかったです。
こんなものが奈良時代に造られていたなんて、改めて驚きでした^^
五重塔への入り口は西側を向いているのですが、入ってすぐの所に、はしごのようなかなり急な階段がありました。
老朽化で危険なため、今は登れないようになっているそうですが、各層には水晶の小塔と
ちなみに、五重塔は外から見ると五階建てに見えますが、中に入ると上のフロアがなく、実は一階建てだったり、というものが多いそうなのですが、興福寺の五重塔は上のフロアもちゃんとあるんですね^^