滋賀県を代表する二大名刹「三井寺」と「石山寺」。
どちらも京都のお寺に引けをとらないほど歴史の舞台に登場するお寺ですね。
この二寺が「あお若葉の競演」というコラボイベントを行っています。
同じ大津市内にあるのですが、今回が初めてのコラボイベントです。
こちらがリーフレット。
両寺とも自然豊かで、散策するのに気持ちの良いお寺です。
どちらも桜や紅葉の時期は名所となっているのですが、若葉の季節も美しい、ということからイベントを開催したのだとか。
新緑の空気を感じながら参拝できる良いチャンスですね^^
しかもこんなに大寺なのに、京都市内のお寺とは違ってまだまだ外国人観光客には知られていない感じです。
結構穴場ですよ^^
今回私は、時間の関係で三井寺だけ行きました。
後で説明しますが、目的は新羅明神です^^
特別拝観の内容
特別拝観の内容はこのようになっています。
- 国宝 金堂内陣 特別拝観
- 大日如来坐像(初公開)
- 新羅明神画像
- 新羅明神本地仏 文殊菩薩坐像(初公開)
- 三尾明神画像
- 三尾明神本地仏 普賢菩薩坐像(初公開)
- 三井曼荼羅画像
- 観音堂 特別公開
- 三井寺の観音信仰と美術展
つまり、金堂と観音堂の2か所で特別公開が行われています。
金堂で公開される仏像3体については後で説明しますが、初公開の仏像です。
三井寺の入山料は通常大人600円。
今回の特別公開は金堂と観音堂でそれぞれ500円ずつとなっています。
合計1,600円ですが、入り口では境内にある文化財収蔵庫の入館料も含めたお得なセット券も用意されていました。
今回は金堂の内陣拝観と、初公開の仏像が目的でしたので入山料と金堂だけでもよかったのですが、せっかくなのでこちらで入らさせていただきました^^
三井寺・三院の神仏が集結!金堂内陣 特別参拝
三井寺は、境内が広くて「中院」、「南院」、「北院」と3つのエリアに分かれています。
中心となるのが「中院」。
中院の中心伽藍「金堂」には、弥勒菩薩が祀られています。
そして「南院」と「北院」には、三井寺を守護する神がいて、中心となる「中院」を守っている、という構成です。
今回は金堂に、三院の尊像が一堂に会するということになります。
こちらが今回特別参拝となる「中院」の金堂。
金堂では、普段上がることができるのは外陣まで。
内陣は壁に囲まれて閉ざされ、上がることができません。
でも今回は内陣まで上がれる特別参拝です。
南院、北院の神々も内陣にいらっしゃいます。
金堂の前にも案内の看板が出ていました。
内陣に上がる前に、お坊さんが一人一人に加持(身を清める儀式)を行い、その後に上がらせていただきました。
三井寺では、それだけ内陣が神聖な場所だと考えられているのです。
新羅明神と三尾明神について
南院の「三尾神社」にいらっしゃる神が「三尾明神」。
北院の「新羅善神堂」にいらっしゃる神が「新羅明神」です。
その関係性と、今回公開される仏像との関係がまとめられたものを金堂で頂きました。
「三院の神と仏」と書かれている行にあるのが、今回金堂で公開される神仏です。
ここでこの図を見ると、
- 本地仏・普賢菩薩坐像
- 本地仏・文殊菩薩坐像
- 三井曼荼羅
というものがあります。
三尾明神や新羅明神とは関係ないじゃないか、と思う方もいるかもしれませんね。
実は大いに関係があります。
わかりやすくいうと、三尾明神の正体が普賢菩薩、新羅明神の正体が文殊菩薩、ということです。
本地仏って何?
そのカギを握る言葉が
「本地仏」は、平安時代に成立した
この説は、
仏や菩薩が、衆生を救済するために、仮に神の姿となって現れる
というものです。
仏や菩薩が、神に変身して人々を救う、ということですね^^
この時、正体である仏のことを「本地仏」、変身した姿である神のことを「垂迹神」と呼びます。
仏教は奈良時代に入ってきましたが、その時、日本に古来からいる「神」を信じるのか、新しく入ってきた「仏」を信じるのかでモメることがありました。
そこで、「神は仏が変身したものなのだ」と考えれば、神も仏も一緒になるので、在来の神を信じる人々も仏道に引き入れることができるわけです。
そうやって、神と仏を一体とみなすことを「神仏習合」といいます。
よく、神社とお寺の区別がつかないという方がおられます。 でも、それはおかしなことではありません。 歴史を紐解けば、区別がつかないのも当然の流れなんですよね^^ そのカギを握るのが「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」です。 …
話がそれてしまいましたが、こちらが本地仏の二体です。
左が三尾明神の本地仏・普賢菩薩。
右が新羅明神の本地仏・文殊菩薩です。
画像:購入したポストカードより
いつの時代の作なのか、詳しくは述べられていませんでしたのでわかりません。
でもどちらも美仏ですね^^
三尾明神は古くから、三井寺のある長等山の地主神です。
そして新羅明神は、三井寺中興の祖「智証大師 円珍」が、唐から帰国するとき、その船頭に現れて守護をすることを約束した渡来神です。
源氏の尊崇を集めた神でもあります。
その後に三井寺の守護神となったわけですが、その本持仏を拝見するということは、その神々によりお近づきになった、という感覚が得られました^^
秀吉も恐れた祟り神・新羅明神
画像:「三井寺秘宝展」の図録より
冒頭でも述べましたが、私は今回、新羅明神関係のものが拝見したくて、こちらにきました。
なぜなら新羅明神は、とにかくキョーレツな神という印象があるからです。
なぜかというと、新羅明神は昔から祟りを恐れられている神なのです。
豊臣秀吉の時代、三井寺は秀吉の命で領地を没収されたことがあります。
その時、金堂の建物は比叡山の西塔にある釈迦堂に移築されました。
他の堂宇はことごとく破却されたのですが、その時唯一残ったのが新羅善神堂です。
新羅明神の祟りを恐れたんですね。
新羅善神堂には新羅明神の坐像が安置されているのですが、三井寺はなかなか公開しようとしません。
上の写真は、今回公開された新羅明神の画像です。
渡来神らしく、朝鮮半島から来た紳士のような姿で描かれていますね。
そういう新羅明神の画像は多数あって、それらはよく公開されます。
今回公開されたものも、上の新羅明神の画像と本地仏でした。
でも、新羅善神堂の新羅明神坐像だけはなかなか公開しようとしません。
最近では、2008年に大阪市立美術館の「国宝 三井寺展」で50年ぶりに公開されました。
その姿は、白塗りの顔に両目の間隔が狭く、目尻はかなり垂れ下がっています。
そして高すぎる鼻、指も異様に細長くて奇妙な感じで曲がっています。
このように、あまりに異様な姿なのです。
昔は、この神を見たものは目をつぶされるとも言われていたそうです。
そもそも新羅善神堂は、国宝に指定されていて立派な建物なのですが、その境内はまるで朽ち果てた寺跡のような雰囲気で、うっそうとした森の中にあるんです。
詳しくはこちら。
そういう場所なので、比較的整えられた三井寺の中院とは違って、観光客は一人も来ません。
三井寺の案内板にも新羅善神堂のことは触れられておらず、まるで紹介することを避けているような印象がありました。
それだけ祟りを恐れているということなのでしょうか?
色々と深い事情がありそうな感じですよね^^
そんな新羅明神ですが、今回その本地仏に出会えただけでもなかなか貴重でした。
そして、今回のイベントの期間だけ頂ける御朱印がこちら。
新羅明神の御朱印です^^
内陣のご本尊、弥勒菩薩
金堂の内陣にいらっしゃるご本尊は、秘仏の弥勒菩薩。
三井寺の弥勒菩薩は今まで御開帳したことがない絶対秘仏として有名で、三井寺の方ですら見たことがないのだそうです。
今回は内陣特別公開ということで期待していたのですが、内陣の中央には大きな厨子があって、その厨子の扉は固く閉じられていました。
やはり見ることはできないんですね^^;
なぜ「絶対秘仏」なのか?
それはわかりません。
でも、「秘仏」のことを書いた記事でも触れましたが、ここはお坊さんすら見たことないのですから、「いますが如く奉仕」しているのではないか?と思っています^^
でも、「信仰」という面から考えれば、姿は見えなくても良いのです。
人は信じてさえいれば、それを心のよりどころにして生きていけますからね^^
これから三井寺の内陣に上がる機会のある方は、その閉ざされた厨子の扉の奥にロマンを感じてみてください^^
西国巡礼十四番札所 観音堂の内陣拝観
三井寺にはもう一つ重要な信仰、「観音信仰」が根付いています。
その中心地となっているのが、西国三十三所十四番札所の観音堂です。
今回は観音堂の特別公開として、こちらも内陣に上がることができます。
観音堂のご本尊は、如意輪観音。
33年に一度しか御開帳しかしない秘仏です。
私は前回の御開帳の時に訪れて拝観することができました。
もしかして、今回も拝観することができるのか?と少し期待したのですが、如意輪観音だけは残念ながら扉が閉ざされていました。
ちょっとがっかりですね^^;
しかし、その脇侍の毘沙門天立像、愛染明王坐像は拝観することができました。
※ 画像:リーフレットより
そして観音堂から繋がっている書院では、「三井寺の観音信仰と美術展」というタイトルで、江戸時代を通じて奉納されてきた絵馬などが展示されていました。
こちらの拝観は、2018年の桜のライトアップの時のも行われていたので、見ることができるチャンスは結構あるかと思います。
私が訪れたのは平日だったのですが、天気が良くて散策日和だったにもかかわらず、観光客はほとんどいませんでした^^
人が少ない境内は気持ちよく散策できますよ♪