10月3日から11月26日まで、京都国立博物館で、超ビッグな展覧会「国宝展」が行われています。
京都国立博物館では3度目となる展覧会で、関西で国宝展が行われるのは、なんと41年ぶり!
2017年度に新たに指定される作品を含めて、国宝に指定される美術工芸品は885件(建造物223件は除く)。
今回の展覧会では、その4分の1にあたる約200件もの国宝が集結するのです!
これはすごいことですね^^
こちらがリーフレット。
ここにチラッと載っているだけでも、神護寺の「伝・源頼朝像」、俵屋宗達の「風神雷神図屏風」(風神)、平等院の雲中供養菩薩像など、いずれも主役級ばかりですね!
ただし、開催期間は主に4回に分けて展示替えしながら公開されます。
- Ⅰ期 10月3日(火)~10月15日(日)
- Ⅱ期 10月17日(火)~10月29日(日)
- Ⅲ期 10月31日(火)~11月12日(日)
- Ⅳ期 11月14日(火)~11月26日(日)
これは総入れ替えの日程ではなく、主な展示替えです。
展示品によって次の期に引き続き展示されるものもありますし、期間中に展示替えされるものもあります。
こんなに勿体ぶらなくてもいいじゃないか!
と言いたいところですが、「国宝」という性質上、仕方がないことなのです。
展示期間が限られているんですね!
文化財保護法に展示期間に関する取り決めというものがあって、原則として公開回数は年間2回以内とし、公開日数は延べ60日以内とされています。
さらに、たい色や材質の劣化の危険性が高いものは、年間公開日数の限度を延べ30日以内となっています。
参考:文部科学省|国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項の制定について
なので今回の展覧会は、4期でそれぞれ顔ぶれが違ってきます。
メインで見たい展示品を決めて見に行く日を決めた方が良いでしょう。
ざっくり分けるなら、前半と後半で2回見ておけば、大部分を見ることができるかもしれません^^
私はまずはⅠ期に見に行ってみました。
その中から心を惹かれたものを紹介します。
見事なプロポーション!デザイン性の高いミステリアスな土偶
私は考古分野はあまり得意ではありませんが、今回の展覧会では、まるで宇宙からきた異星人のような土偶たちに目を奪われました。
※ポストカードより
左から縄文のビーナス、仮面の女神、縄文の女神です。
アニメのキャラにも出てきそうな、現代アートでも通じそうなデザインですね^^
展覧会ではそれぞれ個別のショーケースに展示されていて、360度どこからでも見ることができるようになっていました。
一番左の「縄文のビーナス」は、長野県茅野市の棚畑遺跡から出土したものです。
これは妊婦を象ったと言われています。
お腹の垂れ具合がなかなかリアルに表現されています^^
特に目立つのは、ウエストのくびれ具合からいきなりプリッと大きくなるお尻にかけて。
かなり極端ですね^^;
それだけ極端に表現するということは、大きなお尻の女性が好まれていたとか、丈夫な子を産むと信じられていたとか、とにかくお尻が大きい、ということを重要視していたのでしょう。
全体的に角が少ないというか、丸みを帯びて女性らしく優しい雰囲気になっています。
真ん中の「仮面の女神」は、長野県茅野市の中ツ原遺跡から出土したものです。
まるでガンダムに出てくる「ジオング」のような土偶ですね^^
仮面をかぶって、手を広げるような表現をしているところから、呪術師のように見えます。
横から見ると、仮面を後ろで結ぶ紐まで表現されていて、これが仮面を表現しているということがはっきりとわかるのです!
身体の幾何学模様も、何か呪術をかけているようなイメージを膨らませます。
呪術に願いを託していた時代に思いを馳せることができる作品ですね。
右の「縄文の女神」は、山形県舟形町の西ノ前遺跡から出土したものです。
こちらは「縄文のビーナス」とは違って、割とスリムに作られています。
パンタロンをはいているような、現代人的な雰囲気もします^^
そして上を向いている姿も、何か意味があるのでしょうか?
全体的には縄文時代とは思えないほどの造形美ですね。
天平美人の面影を伝える、薬師寺・吉祥天画像
※ポストカードより
薬師寺では宝亀三年(772)に吉祥悔過会が始められた時に、本尊として祀られるようになった画像です。
「吉祥悔過会」は、1年の罪業を懺悔し、除災招福を祈るというもの。
お正月に行われる儀式ですね。
光明皇后を写したとされる画像で、これぞまさに天平美人の典型!
精緻で気品がありますね^^
麻布に描かれた独立画像としては、日本最古の彩色画なのだそうです。
縦53cmの小さな絵なのですが、展覧会では間近で見ることができます。
最高の形で迎えに来てもらいたい!知恩院の早来迎
※ポストカードより
こちらは、知恩院が所有する「阿弥陀二十五菩薩来迎図」、通称「早来迎」です。
この絵は何度か見ているのですが、私は結構好きなんですよね^^
絵の右下には、今まさに臨終しようとしている行者がいて、そこにジェットコースターのように急いで迎えに来る阿弥陀様一行のお姿を描いたものです。
この、「急いで迎えに来る」というのが非常に重要なことだと考えられていて、この絵は最速で来ている様子を表現しているのです。
急いで来てもらえば、早く極楽浄土で生まれ変わることができます。
これは「九品往生」という考え方にもつながるのですが、浄土教では生前の行いによって、極楽往生するときのパターンが9つに分かれます。
上品上生、上品中生、上品下生、中品上生・・・・下品下生
という風に、9つにランク付けされるのですが、上品上生だと、迎えの人数もたくさんいて賑やか、そして極楽往生できるまでの時間も速いのです。
それは、上品上生で1~7日と言われています。
それが1ランク下がって、中品中生になると、人数が少し減り、極楽往生までの時間は1小劫かかるといわれています。
「劫」というのは時間の単位で、具体的にどれくらいと決まっていなくて定義があいまいなのですが、人間の一生では微々たるものにすぎないほど長い時間なのです。
1ランク下がるだけでそれだけの差があるわけです。
なので、何としても上品上生で極楽往生したい、という願いがこの絵にこもっているわけです。
來迎雲の速度感が見事に出ていますね^^
この展覧会は、とにかく国宝ばかりなので、紹介してもしきれません。
今回の記事では触れていませんが、例えば雪舟の作品で国宝指定されたものは6点あるのですが、その6点が1つの部屋に揃っていたりします^^;
これは、以前行われた雪舟展でも成しえなかったことなのだとか。
とにかくすごい展覧会ですので、ぜひ行ってみてください。
ただし、混雑必至ですので、気合いを入れて全部を見るのは結構大変です^^;
でも、すべての場所が混んでいるのではなく、書跡や絵巻物など、低い位置に展示されているものの所が混んでいる感じでしたので、スイスイ見れるものもあります。
逆に、絵画や彫刻など、ちょっと離れた位置からも鑑賞できるので、混まないんですよね。
なので、不得意な分野は最前列の後ろからチラッと見程度で済ませて、興味が深いものに並んだ方が良いように思えます。
並ぶのに力を入れると、疲れて鑑賞に集中できませんからね^^;
展覧会は、11月26日(日)まで。