奈良国立博物館で、源信展が始まりました~♪
日本人なら誰でも「地獄といえばこんなところ」という共通のイメージを持っていると思います。
悪いことをした人は地獄に落ちて、鬼に窯ゆでなどの拷問を考えられないくらい長い時間受け続けなければならなかったり、といった感じです。
みんな同じように想像できるのは、地獄のイメージの元になっているものがあるからです。
それが、源信が書いた「往生要集」という書物です。
同じように、極楽の概念もここに由来するんですよ。
源信は平安時代の僧侶で、日本の浄土教の祖ともいわれています。
2017年は源信の1000年忌にあたる年。
そんな1000年以上も前に決定づけた地獄・極楽の概念が、今の日本人にも根付いているのはすごいことですね!
今回の展覧会は往生要集に影響を受けて生まれた名品も多数展示されます。
私は開催と同時に行ける機会がやってきたので、早速行ってきました^^
源信ってどんな人?「往生要集」とは?
※滋賀 聖衆来迎寺蔵 恵心僧都源信像 - 購入したポストカードより
源信は奈良の葛城郡の當麻で生まれ、比叡山で修行をした天台宗の僧侶です。
「
源信の生きた時代は、民衆の間に「末法思想」が広まった時代でした。
「末法思想」というのは、釈迦の入滅からそれ以後の時代を3つに分ける思想です。
正法 :釈迦の没後から一千年までの世。正しい仏教が伝えられて、修行をすればその効果が現れる時期。像法 :正法後の一千年間の世。仏教の教えは残っているが、修行をしてもその効果がなかなか得られない時期。悟りを開く人はほとんどいない。末法 :像法後の世。仏教の教えが廃れ、悟りを開くために修行をする人すらいなくなってしまう。天変地異、戦争、虚言などが横行し、それが永久に続く時期。
つまり、「末法の世」になると、釈迦の教えの効力が失せ、乱れた時代になる、という警告のような思想ですね。
日本では1052年(平安時代)が末法入りの年。
源信が活躍した時代と重なります。
その頃、天変地異が相次ぎ、飢餓や疫病などが巷にあふれるのですが、それは末法の世の前兆だとして恐れられていたんですね。
その影響で、極楽浄土への誘いを教えとする浄土思想が急速に広まります。
源信もこれを受けて比叡山中の経堂を巡り、インドや中国などをはじめとする膨大な経文を読破します。
そして、浄土への往生の仕方をまとめた書物が往生要集です。
往生要集の趣旨は明快で、
「末法の世でも極楽に往生できる方法を教えよう」
というものです。
第一章に穢れた末法の世界から離れようという
現代のノウハウ本と同じ流れですね^^
往生要集は、その中でもとりわけ地獄について細かく書かれていることで有名で、その様子を描いた仏画が多く描かれています。
聖衆来迎寺の国宝 六道絵が一堂に集結!
上の写真は以前、聖衆来迎寺に行った時の写真です。
毎年一回、六道絵が公開されるのですが、普段は博物館に寄託されていて、公開されるときも本物は十五幅のうち二~三幅程度。
残りはレプリカで公開されます。
「六道」についてはこちらに書きましたので参照してください。⇒聖衆来迎寺の虫干し 六道絵を拝観しました
レプリカの方が見やすさは上なのですが、やはり本物を・・・と望んだら、すべてを見るのに何年かかかります。
でも今回の展覧会では、本物の十五幅を一気に見ることができます!
このチャンスはそうないですね^^
それにしてもこの六道絵は、表現の仕方が怖いのです><
例えば「等活地獄」。
※画像 往生要集 六道絵より
地獄道には8つの地獄があるといいますが、等活地獄は一番ライトな地獄です。
とはいえ、実際に行くことを考えると、とても耐えられるものではありません><
ここでは、ある者は鉄棒で打ち砕かれ、ある者は料理されるように刀でさばかれたりしています。
そうやって死んでしまうのですが、ここから怖いのが等活の意味。
「等活」というのは、死んでも「活活」という合図でまた蘇えらされてしまう、つまり死にたくても死ぬことができない苦しみのことをいいます。
なので、鉄棒で打ち砕かれて死んでも、また生き返って同じ刑を受ける苦しみが続くわけです><
これでライトなのですから、一番下の阿鼻地獄にもなると・・・
地獄には落ちたくないですね~。。
そして、どういうことをすると地獄に落ちるのか?
それを刑ごとに小地獄としてピックアップしているものもありました。
国宝の地獄草紙です。
この絵は後期に展示される地獄草紙の一つ、「鉄磑所」です。
※画像 リーフレットより
ここでは人のものを着服したものが落ちるそうです。
罪人は鉄の臼ですられてミンチにされます><
そしてその肉片はまた甦らされ、同じ苦しみを受けるわけです><
地獄に落ちないよう、やましいことはしないようにしたいですね^^;
源信展は9月3日(日)まで。
前期は8月6日までで、8日以降は後期となります。
聖衆来迎寺の六道絵は前期の展示ですので、それを見たい方はぜひ前期中に足を運んでみてください。
ちなみに私は、源信展に行く前にこちらの本を読みました。
事前に読んでおくと、より一層楽しめると思います^^